黒い縁取りはなかったが、一通の封書が速達で届いた。普通のサラリーマンをしていた頃の会社からである。「どうせ事務的な連絡やろな」と思い、開封したところ、企業年金関係の要回答の書類で、今まで届いたことのないものだった。
内容はというと、「企業年金を受け取っている者が住民票基本台帳に記載されていることを証明しろ」というもので、所得税法に基づく要請らしい。調べる気もしないが、要するに所得税上、年金は特別の扱いを受けている。だから、「誤魔化していないことを示せ」というわけだろう。
厚生年金に関しては毎年秋になると日本年金機構から書類の提出を求められる。その類かもしれない。これまで企業年金に関して何も求められていなかったのがむしろ不思議だったのかもとも思える。
今回の手続きとしては役所に行き、証明印をもらう必要がある。多分、京都の場合は区役所に行くのだろうが、市役所の可能性もあるから、面倒でも電話で確認してから行くのが無難かも。
年金を受給している老人に、「極力廃止せよ」と国自身が号令をかけている「書類への押印」をしてもらうため、酷暑の候の熱中症はもちろんのこと、外出と密の回避が求められるコロナをものともせず、役所に出向けというわけだ。速達で届いたのは「とっととせい」との意味である。
この種の書類が来る度に思うのは、日本の行政の後進性である。住民票のシステムと税務システムとを連動させれば一気に解決することを、無駄な動きと無駄な書類の作成を行政が国民に求めている。しかも、企業を手足として使い、国民である年金受給者に間接的に命令するわけだ。何回か書いたように、僕としては、税務システムに住所などの個人情報を流してもらって大いに結構である。何のやましいこともないことだし(ミスで何かあったとしても、どうせ些細だろうし)。
それに税金に関しては何年も前から確定申告している。企業年金もそこで申告している。「その情報をどうして使わないのや」とも思う。
行政としては「ミスがないように」というわけだろうが(今の日本の組織の構成員はたとえ些細であろうともミスを一番恐れている)、「あんたのミスをカバーするために、未然に防ぐために、何で酷暑にもコロナにも負けずという出立ちで、役所に出かけんとあかんのや」「あんたの手下やないで」と思ってしまう。
それに、役所の証明を受けるには手数料が必要だろうし、書類の返送に必要な切手は自分持ちである。この切手が自分持ちなのは日本年金機構と同じである。「何で親方日の丸の日本郵政の経営を助けんとあかんのや」とも思ってしまう。
いろいろ書いたが、この日本の行政の後進性、トップ層にシステム的な感性が欠如していることから仕方ないのかもしれないが。
2021/08/03