川北英隆のブログ

新政権は優先順位を付けよ

新しい内閣が発足した。「これなら菅さんの方がましかも」「今度は大衆迎合になるのでは」との予感もする。そうならないように頑張ってもらいたいものだ。というのも、日本の経済は土俵際に追い詰められているから。
某財務省の次官、つまり日本の財布を握る最高責任者(家庭で言うとお母ちゃん)が、9月に立候補した自民党総裁候補者について「バラマキ合戦」と書いた。それに対し、当の候補者達が批判を始めた。建前なのか本音なのかは知らないが(政治家は庶民には理解の難しい日本語を使うことだし)、本気で批判するのなら的外れもいいとこだ。日本の財政が危機状態にあることを知らずに自民党総裁にひいては総理大臣になってもらいたくないし、知らなかったとしたらそもそも国会議員として失格である。
たとえば、コロナ対策に資金が必要なことは理解できる。しかし財政的な制約がある。とすれば、どの政策を優先すべきなのかを判断すべきである。優先順位が低い場合には支援打ち切りの可能性が高まる。もしくは、コロナと関係のない政策を止めないといけない。その判断に対して噴出する反対意見を抑制するのが、本当の政治家ではないのか。すべての要求を「ええやん、ええやん」と引き受ける政治なら、誰でもできる。
前にも書いたが、今の日本はこの優先順位付けが大の苦手なようだ。要するに八方美人に徹し、非難されないように振る舞う。通常ならそれでいいかもしれない。しかし、発展途上のままの国を除くと、日本の財政状態が最悪にあるのだから、優先順位付けは絶対に必要である。
某財務省の次官はこの点を突いた。彼の本来の役割である。職を賭したのである。日本の平々凡々な役人には見られない勇気というか、本来の誠実さだと思い、僕は大いに見直している。そのくらいの誠実さが他の役所にも必要である。自分自身の出世だけを心がけ、小手先だけで問題に対処し、長期的な展望を何も示さないのでは、公僕としての職務に不誠実である。
もう少し言えば、予算の制約がある中で、日本国全体、全国民が栄える政策はない。そんな政策を夢見るとすれば、全員が徒競走で一等賞を目指す幼稚園か小学校低学年の運動会みたいなものだ。欧米のような大人から見れば、「なごやかで平和やね」「でも近い将来、大人の世界に放り込まれるけど、どうするのやろね」である。
現実には大きな予算の制約があるのだから、政策の優先順位を付け(一等賞からドベまではっきりと順位を付け)、勝つものと負けるものを決めないといけない。もちろん個人的には「そんなことをしたくない」のだが、現実には勝ち負けが決まってしまう。
再三書くが、勝ち負けは必然である。「全員が勝者だ」というのなら、それは国内で通用するかも知れないが、海外では通用しない。そんなことを繰り返していたら、全員が、つまり日本全体が敗者になり、ぱくりと食べられてしまう。そう思う昨今、円安が進んでいる。これが日本を食べる海外の触手の前兆でなければいいのだがと、願うばかりである。

2021/10/12


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