ネットでのディスカッションの録画をした。元々はリアルで実施していたディスカッションなのだが、コロナ以降、ネット配信となり、その画像を事前に録画する方式に移行している。録画に際し、たまたまバリュー株投資が話題になったので専門家に質問してみた。
コマーシャルしておく。ディスカッションは京都大学経営管理大学院の主催である。裏ではオービス・インベストメンツの東京に支援してもらっている。オービスは長期の株式投資で世界的に著名なアセットマネジメント会社である。「オービス・インベストメンツ」で検索すると、その概要がわかるだろう。
今回登壇したのは、ラッセル・インベストメント喜多幸之助氏、ブラックストーン坂本篤彦氏、オービス・インベストメンツ時国司氏、そして川北だった。配信は少し先(12月に入ってから)なので、「登壇する」と書くのが正しい表現だろう。配信先は特定顧客に限定になるようだが。
全体テーマは「長期投資のリスク」だった。現在、インフレ率が高まり、それに対して市場がどのように反応するのかに注目が集まっている。もっとも誰しもが注目しているリスクだから、現状の延長線上に長期投資のリスクがあるとは思えない。
インフレが株式市場の相場に大波乱をもたらすとすれば、今とは違う「何か」が起きなければならないのだが、その「何か」がわかれば誰も苦労しない。つまり、誰も何もわかっていない。これが相場の本質である。そう理解することが重要である。逆に相場の明日を知っていれば、大儲けである。
それはともかく、今回の録画での収穫の1つが「バリュー株投資」だった。バリュー株とは言い換えれば「割安株」である。割安株は割安なのだから、それに投資すれば儲かるに決まっている。トートロジー的表現である。問題は、では割安株とは何かである。
今風に言うのなら、割安株の判定の多くを株価純資産倍率(PBR=企業の時価総額/純資産)に委ねる投資家が多い。これはノーベル賞を受賞したファーマ(ファーマとフレンチの3ファクターモデル)の罪である。というか、それを盲信した投資家の罪なのだが、ファーマは分析においてPBRをバリュー株かどうかの指標とした。PBRの低い企業がバリュー株(割安株)の集団だとして、3ファクターモデルという投資モデルを編み出したのである。投資家はこれを拡大解釈し、PBRの低い企業の株式のすべてを割安株だとしてしまった。
今回の録画において、この点を正しく理解してもらうためオービスの時国さんに、日本のようにPBR1倍割れが多い市場と、アメリカのようにPBR1倍割れが少ない市場とを同列に扱い、PBRでバリュー株かどうかを見定めていいのかどうか質問した。
これに対する答えは明快だった。PBRや株価収益率(PER)という単純な指標でバリュー株かどうかを決めてはいけない、本来は企業価値を計測し、それと市場価格との比較だとのことだった。
ファーマの理論を盲信しがちな日本の投資家に対する警告だと受け止めたい。
2021/11/25