川北英隆のブログ

株式投資とは何なのか

株式投資に対する誤解というか偏見が教養人に依然根強いことに気づいた。彼女らを含む彼らには、要するに株式に資金をつぎ込むのは投機なのだろう。
これは、株式を買ってすぐさま売る行動と、一度株式を買ってから何年も保有することとを一緒くたにして、つまりクソも味噌も「株式投資」と称することに原因がある。
両者はまったく別物である。今日買って明日売ることは賭博に近い。他方、長期間保有することを当初から意図するのが投資である。
今日買って明日売るのは、かつて証券会社が推奨した方法である。「凄い材料があるので、明日にも上がりまっせ」とセールスマンが電話をしてくるので、「そうかなあ」と少しは疑いつつも、「プロが言うのやから」と買う。確かに明日に上がることもあるのだが、「もっと上がるかな」と待っていると、明後日には下がってしまう。セールスマンはプロではなく、ただ株式を売買させたいだけの証券会社の手先に過ぎなかった。
100円がゼロ円になることはめったにないから、競馬や宝くじなどの賭博よりはましかもしれない。しかし資金を注ぎ込んだ者すべてが儲かるわけもなく、彼らをトータルしてみると損になる。証券会社だけが、賭場を開いた胴元よろしく手数料を稼ぐのだから、やはり「そんなの株式投資ではない」「賭博の一種やな」と言わざるをえない。
「株式を買うのは博打だ、投機だ」と思う教養人には、この証券会社の悪行が焼き付いているのだろう。同時に短期的な売買と長期的な保有との決定的な違いを理解していない。
一口で言えば、短期的な売買とは勝ち馬を探す行為に等しく、もしくはより以上に難しく、的確に当たるはずがない。
他方の長期的な保有とは、合理的な判断に基づき、企業の成長を信じる行為である。それとて100%的中するわけではないが、かなりの確率で的中する。さらに分散投資(複数の企業に投資する)という技法を加えることで、長期的な企業成長をほぼ的中させることができる。この企業成長のおかげでプラスの投資収益がほぼ確実に得られる。
注意事項がある。長期投資に関して、経済の成長がなければ企業も成長しない。だから長期投資とは経済の成長を信じる投資でもある。「経済なんて成長しない」「成長するとしても当面は駄目や」と思うのであれば、その場合に限って株式に近寄らないことである。
もう1点、注意しておきたい。新聞の株式に対するコメントには大きな欠点がある。長期なのか、短期なのかを明示していないことである。
同じ日の紙面に、「今日上がったけど、明日は反落するかも」という短期の視点と、「この企業の事業が有望だと思われたために株価が上がった」との中長期の視点とが混在している。しかも上で述べたように、短期なのか、長期なのかがどこにも示されていない。行間を読むしかない。
株式投資では、ちゃんとした企業を複数選ぶことで、それなりの投資収益が得られてきた。これが過去の実績である。将来に対しても、経済の成長を信じる限りにおいて、ちゃんとした企業を複数選ぶことで、それなりの投資収益が得られるだろう。

2021/12/16


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