一昨日、ネットのニースを見ていると「東京に大雪が降るかも」とのニュースが目立った。ウクライナ問題と同列かそれ以上の扱いだったように思う。計画的な電車の運休や道路の通行止めも報じられていた。スリップ事故へのさまざまな注意もあった。
僕自身、東京に住んでいた時に大雪や台風でえらい目に遭ったから、大騒ぎに一定の納得感がある。どうしても出席しないといけない会合に(上司の父母両名の葬儀の手伝いに)行くため、動いている交通機関を探しつつ大きく迂回し、普段の何倍も時間をかけて駆けつけたことがある。1980年代の後半(1986年?)だった。また朝に襲来した台風性の大雨に「学校なら休校やのに」とぶつぶつ言いながら、ずぶ濡れになって出勤したこともある。
僕の事例はリモートでの出席なんて夢のまた夢の時代のことである。葬儀はともかく、コロナのおかげもあり(コロナを拝んでおこう)、リモートでの仕事が可能となってきた。天候に応じてリモートを積極的に活用すべきである。つまりネットのニュースとして、リモートで仕事をするようにあの手この手で呼びかけるのが正解だった。余計なお世話なのかもしれないが、スリップ事故に気をつけるように呼びかけるよりは余程まともである。
ついでに思ったのはニュースが短絡的なことである。ニュースだから当然なのかも知れないものの、雪にひっかけ、長期的な文脈の中で事実を語っていない。事実とは、東京という一極に日本人の生活や経済活動が集中していることである。東京集中がなければ、一昨日の雪程度では大騒ぎにならないはずである。雪程度でこれだとしたら、心配されているとおりに富士山が爆発し、灰が大量に降ったら何が生じるのだろうかと怯えてしまう。
富士山爆発だけではない。大雨による荒川の氾濫、首都圏直下型の大地震、(首都圏に近い箇所で起きる)南海トラフ地震による津波など、首都圏は大きなリスクに晒されている。正確には日本のどこにいても自然災害のリスクから逃れられない。だから、リスク分散が日本の最重要課題である。
不思議に思うことがある。政府は地震や火山噴火による被害推定を脅しのように公表するのに、その対策を積極的に、また声高に進めようとしないことである。職員として「被害を推定するのが職務であり、対策は守備範囲外」なのだろうが、それなら、その省庁を担当する大臣などのトップが被害推定を基づき関係省庁と積極的に連携し、行動すべきである。
今の政府がやっていることはというと、民間企業にBCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)を策定するようにと指示を出すか、国土交通省などが堤防や水門を補強する程度である。本来、政府自身が民間のBCPを集め、その分析と統合に力を注ぐべきなのにと思う。
というのも個々の民間企業のBCPが整合的だとの保証が皆無だからである。また社会活動や経済活動全体が特定の地域に集中していたのでは、BCPが全体として機能不全に陥る可能性がきわめて大きいからである。「親亀がこけたら子亀、孫亀・・」という具合に、東京の交通、電力、通信インフラが壊滅的な被害を受けた場合、個々の民間企業のBCPなんて木の葉のように吹き飛ぶだろう。
マスコミもこの点を強調して報じるべきである。多くのマスコミは首都圏に依存している。そこに本社機能、設備、記者が、そして広告主が集中している。だから「首都圏一極集中が大問題だ」と報じたなら、それは「天に唾するようなもの」と思っているのかもしれない。
しかし日本全体の活力維持には大いに貢献する。恐れることなく「火山噴火、大地震、大洪水が起きていない今のうちに東京から脱出しよう」と叫ぶべきである。
2022/02/12