川北英隆のブログ

医者になろうは正しいか

「医者になろう」には二重の意味を込めた。1つは高校時代、僕自身が大学への進学コースを決めた時に生じた迷いである。もう1つは、知人が子供に対して悩んだことである。
僕のことは手短に終えよう。
高校2年生になる時だったか、大学に進学するとして学部をどうするのかの選択を迫られた。進学に関して緩い、良く言えば自由闊達な高校だったものの、3年生の時には文系と理系とに大雑把なクラス分けがされる。その時に浮かんだ選択の1つが医学部だった。医者なら楽して悠々自適に生活できると思った。
友人にそんな話しをしていたら、「医学部に行くのやて」と話題になった。「話題になるって、ひょっとして医者って大変なのかな」と少し考えてみた。ちゃんとした大学の医学部に進むには、まずは真面目に勉強しないといけない。その上、医者になったら他人の血を頻繁に見ないといけない。そんな苦労に耐えられそうになかった。だから結局は一番苦労が少なく、比較的豊かな生活が身近だと思えた(正しかったかどうかは別だが)経済学部にした。
この医者を外した判断は多かれ少なかれ的を射ていたように思う。もっとも大学時代、あまり親しくないのと話していると「理系崩れか」と言われたのには釈然としなかったが。
もう1つの知人の子供のことは、時代にマッチした話題だろう。
知人の子供は確か今、小学6年生である。小学校に入る頃から知人は、「女の子だから、成績さえ良ければ医者にさせる」と意気込んでいた。数年前は、「私立の医学部程度なら十分受かりそうなので、中学校は進学校を受けさせる」と言っていた。その直後にコロナ問題が勃発した。今では「将来何になるのかは子供の好きにさせる」と大きく変化している。
医者だが、安穏とできる職業ではない。大病院の勤務医は所詮サラリーマンでしかない。給与は少し高いだろうが。開業医になれば自己都合で休むわけにいかなくなる。サラリーマンより好ましいどうかは、どういう生活を望むのかによるだろうが。
それに、変な患者、トンチンカンな患者も相手にしなければならない。日々、他人の血や膿とも対面である。今ではコロナの感染を心配しないといけない。これらを避けて働こうとすれば良心がうずくだろう。
多分、以上のようなことを知人はイメージしたのだろう。加えて、近くの進学校には電車で行かなければならず、コロナを恐れている知人にとって、それが耐えられなかったのかもしれない。以上から、子供に医者になるようにと積極的に勧められなくなったようだ。
ネットのニュースを見ていると、著名進学校では著名大学の医学部志望離れが目立つとか。今の時代、多少能力があり、社会人になって悠々たる生活をしたい、大きく稼ぎたいと思うのなら、起業という選択肢が有力である。IT関連なら比較的簡単だし、企業に成功すればその時点で「上がり」の身分になる。起業がうまくいかなかったとしても、ITの能力さえあれば、引く手あまたである。
こう考えると、職業としての医者という選択肢はあまり有力ではない。もちろん社会に医学で尽くしたいというのなら別だが。
ITを駆使した診察が今の医師会の頑なな反対を押し切って正面に出てくれば、その時にはIT医療の専門家という非常に有力な選択肢が登場するだろうが。でもそれって、ひょっとしてIT関連の起業の変形かも。

2022/02/21


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