川北英隆のブログ

ヒグマの国の王様は失脚するか

カムチャツカの山(ほんの入口の山)を歩いた時、ついでだからとヒグマを見に川下りをした。ガイドはライフル銃を持って万が一の場合に備えた。その銃口が旅行者に向けられるリスクを考えないでもなかったが、そこは理性的なロシア人だからとほぼ安心していた。
そのヒグマの国が銃口をウクライナに向けた。ウクライナは黒海に通じ、ドニエプル川が流れ、土壌も豊かで、地理で習ったように穀倉地帯である。歴史を遡るとウクライナは周辺国によって支配されたり、独立が認められたりとややこしい。その過去の歴史が繰り返されようとしている。
民族という用語は、定義にもよるが、あまり使いたくない。世界を旅行すると人々の顔つきや文化が徐々に変化していく。顔つきや文化で明確に人類を分けることはできない。同じ日本人として括られている中にも、中国系、朝鮮系、南方系、北方系などの差異が認められる。関西人と関東人とには大きな文化的な差異もあり、かつては「関西の独立」が真面目に議論されたこともあった。
今や政治体制、言い換えれば法律の適用範囲で国が分かれると定義した方がいいのではないかと思う(トートロジー的だが)。しかも文化をはじめとして多様性が重要な時代である。この点、「かつての領土だから、自分たちの民族が住んでいるから、当時に戻したい」との政治的願望は、表面的な言い分はともかく、あまりにも乱暴である。
この点、欧米を中心としてヒグマの国に経済的制裁を課したのは当然だろう。さらに欧米の企業も政府の動きに追随し、投資、販売、貿易の停止、撤退に動きつつある。「企業の社会的責任」が重視される昨今、ヒグマの国が銃口をウクライナに向けたことに知らん顔をするのでは、「本当に社会的責任を果たした企業経営なのか」と非難される。
今回の制裁の効果は漢方薬的であり、即効性に欠ける。とはいえ(どこまで本当なのかは不明なものの)、報道ではヒグマの国の市民生活に影響を与え始めている。銀行から現金を引き出す行列、クレジットカードの停止、高級スマホなどの供給停止、物価高騰などに直面すると、国内ニュースに統制がかけられるとしても、国民の誰しもが「何があったの」との疑問を抱くに違いない。
国民の日常生活に与える大きな影響は政治に対する不満となる。その不満が爆発すれば現在の体制は持たない。理性的な政治家なら「今の王様は変だ」と考えるようになり、政治体制の変革を目指すだろう。これがヒグマの国の王様の失脚につながる。ヒグマの国の王様が理性を取り戻したなら、失脚だけは防ごうと禅譲を目指すかもしれない。
上記は理想的な国際情勢の変化であり、実現するかどうかは不確定である。とはいえ可能性は十分にある。そう期待したいものだ。

2022/03/02


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