断定してはいけないのだが、元二条大橋の優雅人に飼われていた三毛猫が天国へと昇って行ったようだ。これまで三毛猫が住んでいた御池大橋近くの水門の柵の中が綺麗になっていた。もう誰も(猫の子一匹)住んでいない。
昨年のいつ頃だったか忘れたのだが、その住処に置かれている餌入れと寝床の段ボールが乱雑に散らばるようになった。「ひょっとして」と思っていたものの、その住処の前でスケートボード遊びをするガキンチョのいない朝方か夕方に通らないことには猫なんているわけもなく、確かめられない。コロナの影響から、そんな静かな時間帯に鴨川を歩くことが少なくなり、三毛猫の消息を確認できていなかった。
それが先日、久しぶりにチャンスが巡ってきた。すると、上で書いたように、綺麗に何もないことが確認できた。猫の年齢からして、しかも野生猫だから、次の住処を見つけて移っていったとは到底思えない。
思い出すと、2015年7月17日から18日にかけて京都は大雨が降った。両日で合計260ミリの、京都としては記録的な雨だったようだ。この雨で、その以前まで各橋の下にあった優雅人の豪邸がほとんど流された。優雅人と同居していた猫達も多くは溺死した。そんな中、数少ない生き残り猫の1匹が元二条大橋の三毛猫である。小さな臆病な猫である。どうやって難を逃れたのかはわからない。
しばらくは二条大橋の優雅人、つまり飼い主と一緒に暮らしていたのだが、京都市が橋の下の豪邸の撤去と優雅人の住居変更を徹底した。次の増水で死者が出れば市の責任が問われるからだろう。多分、新しい住居では猫を飼うなんて到底できなかったと思う。三毛猫が(最初の頃はもう1匹、キジトラと一緒に)二条大橋に取り残された。飼い主の優雅人が自転車で餌をやりに来ていた。
そのうち、二条大橋の下が工事用に改装され、猫が追い払われたようだ。追われた三毛猫は、御池大橋近くの水門の柵の中に移った。柵の中なら人のチョッカイから逃れられる。元の飼い主かどうかは不明ながら、猫用の段ボール箱と餌入れとが柵の中に置かれるようになり、三毛猫は生き延びた。
その三毛猫の実際の姿を最後に見たのは2019年12月20日である。つまり新型コロナのパンデミック直前である。その後、鴨川へと出歩く機会が少なくなり、猫の段ボールと餌入れだけを確認する状況が続いた。
野生猫は厳しい。元二条大橋の三毛猫、大雨の前年の2014年生まれだとして、19年までで5歳、昨年21年まで生きていたとして7歳、野生猫としては長寿だろうか。
猫は冬を嫌う。野生であればなおさらだ。そんな元二条大橋の三毛猫に、「今年も嬉しい春が来たで」と伝えておきたい。鴨川にも出るツクシの今年の写真と、里の野生の象徴だと思うミツバツツジの今年の花の写真を添えて。
そして、これからも鴨川が京都市内を平和に流れることを三毛猫に祈っておこう。
2022/03/29