東芝の漂流が続いている。2015年に決算の粉飾が表面化してからおおよそ7年が経過した。この激動の時代、そんな長期間、よくぞ東芝が存続しているものだと思う。それだけ技術力がある証拠なのだが、もう片方の経営力はマイナスということか。
今回は東芝を3つに分けるとか、2つに分けるとか、すったもんだした。その末に2分割案を3月24日の臨時株主総会に諮ったところ、否決された。この株主総会に強制力がないとはいえ、大打撃である。そこで東芝は株式非公開(上場廃止)を検討するとか。ここまで来ると「今更かいな、アホやん」でしかない。
過去にも書いたことながら、株式非公開化のチャンスは2016年、17年にあった。それも何のコストも払わずに非上場になれる(非上場にされてしまう)チャンスだった。それなのに、将来有力な事業分野を売却して資金を工面した上に、社内官僚群の作文力を駆使し、さらには複数のファンドを募って資本増強して、2017年に上場維持が決まった。
これら一連の「上場維持、命」政策のおかげだろうが、その後の東芝の経営に対して外野の声がうるさくなった。経営トップの入れ替わりも激しく、有力なお目付け役のクビが飛ぶ事件さえ発生した。
仕方ないだろう。上場維持は産業政策関係省庁の声でもあったようだ。また資本増強に応じたフォンドの思惑も、東芝の将来について、その長期的な企業価値の向上を図るという点で一致しているとは到底考えられないからである。
しかも経営トップに就任したのは、こう言うと失礼かもしれものの、小物ばかりで、彼らの関心事項は「自分のポジションだけかいな」「上場会社の社長がそんなに嬉しいのかいな」に近いようだった。とすれば、産業政策関係省庁やフォンドのあれやこれやの声を押し切って、何が真に東芝のためになるのかを説得できるはずもないし、その以前に何が真に東芝を救うのかも考えられなかったに違いない。
今後は株式非公開化の道を探るらしいが、その道が見つかったとしても「高いもの」につく。上場している株式を東芝自身もしくは東芝の味方が買い取らないといけないから。東芝が株式非公開化を目指すのではと報じられて以降、株価が上昇しているのがその証拠である。本来なら、経営の混乱は株価の下落要因のはずなのに。
まとめておこう。
5年ほど前、上場廃止になっていれば、株式非公開化のための資金は不要だった。加えて東芝の経営の自由度は上がった。有力な事業分野を当分手元に置くこともできたはずで、その将来像について(高値で売却することも含め)、幅広い選択肢を残すことができた。少なくとも今のファンドの声がないから、片方で産業政策関係省庁の協力の下、技術力を伸ばすことできただろう。
今ここで上場している株式を買い戻すためには多額の資金が必要となる。現在の時価総額が2兆円を超えているから、買い戻しのためのプレミアムを考えれば、3兆円近くの資金を東芝が調達しなければならない。もしくはスポンサーを見つけなければならない。それが可能なのか。まさに東芝にとっての存亡の危機である。東芝という歴史ある社名が泣いている。
「上場、命」「4/4に発足したプレミアム市場、命」と考える企業は、この東芝の事例をとくと考えなければならない。
2022/04/10