川北英隆のブログ

公的インフラは政府の責務

日本の公的インフラが危機に陥っている。水道や橋の老朽化が指摘されている。先日は東京の電力が危機的状況に陥った。それに加え、4/12のニュースでは、JRの在来線の6割もが廃線基準に達しているとか。
電力の問題は政府のエネルギー無策のせいである。11年の東日本大震災によって原発が大鬼門と化した。政府は怖いものに近づこうとせず、電力会社を前面に立たせている。下手に近づき口出しすると、原発の責任とりわけ福島の大災害の責任が政府にあると問い詰められかねない。
原発という収益源を封印された電力会社は送電網の整備や増強ができない。加えて原発の封印がいずれ解かれるかもしれないと甘い期待をいだき、新しい発電設備の新設に二の足を踏んでいる。この11年間のエネルギー政策の空白は、電力インフラに関して、日本を先進国最弱に追い込んでいる。
この電力の後を追いそうなのがJRである。北海道の惨状は時々報道される。鉄路というエネルギー効率の良い交通手段が北海道から奪われようとしている。
4/12のニュースでは、西日本が北海道の後を追いそうな雰囲気らしい。たとえば関西本線や山陰本線が惨憺たる状態にある(乗るとその悲惨さが実感できる)。かつての「本線」つまり大動脈が梗塞状態に近いことを意味する。西日本はその大動脈を「赤字の垂れ流し」「大出血」を理由に切断したがっているとか。
利用するとよくわかると思うが、鉄道網は「インフラの整備と利用」とが悪循環(もしくは好循環)を形成しやすい。つまり、インフラが整備されれば利用者が増え、それがさらにインフラの整備を促す。逆にインフラが劣化すれば利用者が減り、それがさらにインフラの劣化を促す。かつての私鉄が、路線の新設と宅地開発とを組み合わせて発展してきたことを思い出せばいいだろう(若者には記憶がないか)。
それだけではない。鉄道やバスは高齢化社会の重要な足である。「高齢者の運転が大事故の元」だとして運転免許の返納を促すのはいい。そこで本当の為政者なら、「でもね」と思わないといけない。返納した後、買い物、友達との行き来、そして病院通いをどうするのかと。鉄道やバスのインフラがないと、高齢者に「死ね」と言うようなものである。病院の場合は医者や薬局という既得権益者が渋っているネットの活用が重要である。
話しを鉄道に戻すと、在来線を維持するのは株式会社であるJRの責務を超えている。地方活性化対策、高齢化社会対策として、政府の重要な責務となる。10万円とか5000円とか、現金を配ろうという刹那的、(政治家の)利己的発想を離れ、じっくりと腰を落ち着け、政治家が音頭を取り、優秀な役人の頭脳を活用すべき領域である。
在来線を維持し、将来は利便性を高め、地方に人口を呼び集めればいいのではないだろうか。都市部から人口が流出するが、それによってラッシュや渋滞が避けられる。「そんなの嫌だ」と言い張るのは都市部のビルのオーナーや官公庁にコバンザメよろしく引っつく業者である。
地方で子供を育てれば、いずれ感性豊かな大人が増えるだろう。日本の人口が底を打つのも早まるかもしれない。
東日本大震災や新型コロナが日本社会の大転換を促していると考えたいものだ。インフラのあり方が変わって当然である。

2022/04/13


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