川北英隆のブログ

矛盾の石油政策

原油や天然ガスの国際的な取引価格が高騰した。これに円安が加わり、ガソリンをはじめとする石油製品価格が上昇している。以上を受け、選挙を控えた自民党、公明党の政権はガソリン価格の抑制に躍起である。この政策、何か変である。
ガソリン価格を抑制するため、石油会社への補助金として政府はすでに4300億円を投じたとか。このガソリン価格抑制政策を延長するため、新たに1.3兆円を支出する計画らしい。合計2兆円近くになる。2丁の豆腐だけで腹が膨れ上がる。
それに加えてデザートだとばかりに、低所得の子育て世帯に対し、子供1人につき5万円を配る計画だとか。日本に馬に食わせるほどの財源があるのかといえば、食わせられるのは1000兆円(国民1人800万円)を超える借金(国債)の山である。政治家としては、「自分の金やないし」との大盤振る舞いのようだ。次世代つまり子供に対する責任もないのだろう。
それはともかく、ガソリン価格の抑制は日本政府の他の政策と矛盾する。
1つは二酸化炭素の排出量抑制との矛盾である。
ガソリン価格が上昇することで、当然その消費が抑制され、二酸化火炭素の排出が減る。政策的にラッキーである。個人とすれば、車を走らせずに公共交通機関を使えばいい。企業はエネルギー消費を削減するための技術開発に向けて努力をするにちがいない。物の価格上昇は長期的には望ましい効果をもたらす。これが経済学的な常識である。
もう1つはウクライナ支援への効果を考えなければならない。ヒグマの大将の大暴れを抑え込もうと日米欧は一致協力している。そのためにはヒグマのエサを減らし、弱らすことが重要となる。つまり自分たちのエネルギーの消費量を抑えることで、ヒグマが「エサをくれなければ、エネルギーをやらんで」と威張り返ることを防ぐのである。その手段として、原油などの価格上昇による消費量削減効果が重要となる。
ガソリン価格を抑制すれば、消費量は減らない。同時に、ウクライナ支援のために使えた日本の財源が変になる。つまり、財源を使ってガソリン価格を抑制する結果、エネルギー消費量が減らずに(むしろ増えるかもしれず)、ヒグマのエサを増やしてしまう。
イメージすれば、サッカーのオウンゴールであり、自殺行為である。繰り返しに近いが、ウクライナを支援するために利用できたはずの日本の財源という弾丸が、かえってエネルギー消費量を増やし、回りまわってヒグマが美味いエサを食うための財源となる。
政治家として、もう少し頭を働かせてほしい。国民に対し、「ウクライナを絶大に支援しよう、そのためにガソリンをなるべく使わないようにしよう」と訴えれば、ほとんどが(石油業界は難しいかもしれないが)大いに納得してくれるだろうに。

2022/04/22


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