川北英隆のブログ

中途採用増加の意味と対応

企業が従業員の中途採用を大幅に増やしているとか。昨日(5/7)の日経新聞によると、この22年度は23.5%増の計画らしい(日経新聞の調査)。中でも3メガバンクは80%と大幅に増やす計画とある。
いよいよ中途採用の時代に入った。新卒しか採用されない我々の時代からすると隔世の感があるものの、本来の姿に戻ったとも思う。この背景にはいろんな要因があろう。
第1に、デジタル化、環境対応などの新しい取り組みへの社会的要請である。これらに応えられない企業は社会からとり残される。
第2に、新卒を採用し、じっくりと育てていく余裕が企業になくなったことである。収益的な余裕がなくなったこと、社会の変化が早すぎて育てるスピードが間に合わないことを指摘できるだろう。会社内部にノウハウが欠如している課題もありうる。
第3に、年功序列、終身雇用が崩れたことである。そんなものは夢物語だったか、一部の(団塊の世代のさらに10年ほど前の)、超の付くラッキーな世代が味わったものにすぎない。会社は消えるもの、転職は当たり前のものになった。
第4に、大企業の場合、職人的な単独の技術や能力(それらを身に着けた人)が経営全体を支えることがなくなった。いろんな技術や能力を集め、それらの結果として生み出されるいろんな部品、製品、サービスを集めることにより、大企業の経営が成り立つことになった。一言で表現すれば、企業ごとの方言(企業ごとの少しだけ異なった技術など)が消滅の一途である。
もう少し言えば、同じ製品(たとえばテレビ)であっても、ある企業独自の製造方法(部品の摺合せ技術など)が衰退し、むしろ独自部品の設計と製造、汎用部品の調達と組み合わせ、独自ソフトの開発と組み込みなどが重要になったのである。
当然、これらのアイデアの提供や製品やサービスの設計者が重要になるし、全体をまとめる経営者がさらに重要になる。単純な従業員では役立たない。より多くの収入を得るには、従業員自身が自己研鑽しなければならない。
第5に、自己研鑽を積んだ従業員はもちろんのこと、経営者も、より高い収入、より強い関心を持てる職や企業を目指すには、転職が有力な手段となった。企業ごとの方言がなくなっているのなら、なおさらである。企業も人も、今は互いに他を選ぶ時代だと言える。
以上を中途採用が増加する理由として思いついた。有名な学校を出て有名企業に入れば安泰ではない。就職に際して「寄らば大樹の陰」と推奨された時代は過去のものである。寄ったつもりの大樹の芯が、実は腐っていたりする。
大学入試までの勉強で燃え尽きている場合ではない。大学に入っても、就職しても、まだまだ勉強(この場合は能力アップ)を続けないと、自分自身が腐ってしまう。就職後のことも考え、ペース配分しなければならない。

2022/05/08


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