今日の日経の17面に「患者二の次? 医療DX二の足」との特集があった。病気になって医者に診てもらうとして、それがオンラインで可能なら、患者としては選択肢が広がり、非常に便利である。慢性疾患で定期的に通う場合、ますますオンラインが便利である。
この便利さを阻んでいるのが日本の医師会だと、今日の記事が訴えているようだ。だから「患者が二の次」であり、「最優先は医師の都合」というわけだろう。
経験上、そんな「自己都合を優先する医師」の割合は高くない。かかりつけ医的存在だったわが家の診療所の医師はというと、非常に親切だった。いろんな無理を聞いてもらえたし、的確に診察してもらえた。残念ながら、そういう医師だからだろうが、昨年末に突如として亡くなられた。
かかりつけ医の制度を確立し、普段はそこに病気のことなら何でも相談できるようにすれば、医師側には患者個々人に関する情報が蓄積される。患者側も何でも相談できて安心である。だから、かかりつけ医がオンラインで診察に応じることも簡単になり、判断も適切になる。患者としても、とくに高熱などの場合は出向かなくても応急の対応をしてもらえるから、きわめて楽である。
しかし医師会がかかりつけ医の制度に難色を示している。要するに、かかりつけ医制度が確立すれば、人気のある医師と人気のない医師との差が歴然とする。そんな医師の「損になるような」競争を避けたいというわけだろう。多分、腕の悪い医師ほど、「かかりつけ医制度って最悪や」と医師会に訴えているはずだ。
オンラインでの診察もまた、腕の悪い医師に逆風である。オンラインを使えば、少々遠くても腕の良い医師に誰しもなびいてしまう。だから医師会はオンラインにも難癖をつけている。
今日の記事によれば、日本の医療費負担(政府支出に占める公的医療費の割合)は非常に高いのに(OECD加盟の44ヶ国の中で2番目)、医療の情報化、高度化に必要不可欠な電子カルテの導入割合はドベから4番目だとか。つまり、医師の質を横に置くと、日本の医療制度の質はきわめて貧弱、後進国でしかない。
医師の経営のことを最重視する医師会と、その医師会を合理的理由でもって説得できない、患者の方を向かせることのできない厚労省や政治家の情けない姿、前近代的な姿が目に浮かぶ。公僕が公僕として働いていない。
今日の記事の締めくくりには「医は仁術」ならぬ「医は算術」とあるものの、コロナで病床が消えたことからすると、「医は忍術」を付け加えないといけないかも。この忍術もまた、なおざりな制度設計しかできなかった公僕の「おかげ」である。もちろんこの忍術の里はというと、伊賀や甲賀ではなく、霞が関にあるのだが。
追記:医の忍術について、コロナ隠れの術もあった。我がかかりつけ医は「コロナの疑いがあったら言ってきて」とのことだった。新聞で、この術を十八番とする医者が多いと知って、本当に感心した。
2022/05/16