手土産に京都の和菓子をと考えた。日持ちなどの点で羊羮だろう。ところが小豆中心の棹状の、つまり昔ながらの羊羮は京都でもめったにお目にかかれない。寒天中心のものはあるが、少し違う。
虎屋には置いてある。しかし虎屋は明治天皇の東京出張の後を追い、京都から逃げた和菓子屋だと京都人は陰口をたたいているそうだ。それに実家のある郡山の老舗、中島の羊羮(正月前だけの限定製造)を口にすると、虎屋の羊羮は、これも少しイメージと違うな(黒糖の味が強いな)と感じる。
そこで、実は食べたことがないのだが、鶴屋吉信ならあるだろうと思った。まずは大丸京都店に行った。店員に尋ねたところ、置いていない、注文をもらうと取り寄せになり、翌日もしくは翌々日に届くとのことだった。
それでは間に合わないので(泥縄的に思いついたせいなのだが)、高島屋京都店にあるかどうか電話してもらったが、接客中なのか店員が電話に出ない。仕方ないので自分で本店に電話した。「在庫がある」とのことだった。本店(堀川今出川)まで行ってようやく入手できた。
何回か鶴屋吉信の本店の前を通ったものの、店の中に入ったことがなかった。京都で一二を争う和菓子屋だと思わせる広さと上品な雰囲気とがあった。
近くにある俵屋吉富には入ったことがある。菓子好きの社会人学生と一緒だったと思う。この俵屋吉富のHPを見たかぎり、昔ながらの羊羮はなく、それに近いものは季節限定のようだ。
両店とも近くに表千家、裏千家がある。このため京都市内の北側で成り立っているのだろう。そうついでに思っている。
いろいろ書いたが、昔ながらの羊羮は絶滅危惧種のようだ。小豆と砂糖(和三盆?)中心に練り上げ、棹状にすると価格が問題になる。それに食べるには切り分けないといけない。羊羮の丸かじりも可能ではあるのだが。価格と食べるときの手間の観点から、羊羮は1口サイズに変わり、しかも洋風化している。
棹の羊羮、めったに出会わないからますます忘れ去られていく。わが家としては、年齢とともに和風を好むようになったこともあり、絶滅しないうちに鶴屋吉信の羊羮を一度口にしたいものだと願望している。
2022/06/19