沢沿いの道になると獣の糞が多くなる。植物性のカスのような粒が多かった。と、茶色い動物が一匹、道路を横切った。タヌキかなと思った。
その動物、ヒトの気配を感じなかったらしく、草の株で何かを探していた。片手が傘でふさがっているため(傘を下ろすと音がしてしまう)、もう片方の手で写真を撮った。
そのタヌキの写真撮影は(そのタヌキでも僕でもない)3枚目を撮った瞬間、互いに目が合ってしまった。慌てて見たところ、どうもタヌキとは違う。相手の方はヒトだと気づき、「グハッ」と鳴き、大急ぎで道の反対側の草むらに逃げ込んだ。でも警戒心が少ないらしく、そこでもゴソゴソと動いている。近づくと、今度は早い段階で気づかれた。撮れたのは1枚だけだった。
家に帰って調べるとニホンアナグマのようだ。タヌキのように丸顔ではない。長めの鼻筋が少し白い。無計画に駆除されているらしい。ニホンオオカミのように絶滅を危惧するサイトもあった。ジビエ料理で食べられているともあるとか。
動物の頭蓋骨が転がっていた。「まさか食べられたアナグマでは」とは、その時には思わなかったし、ヒトに食べられたなら頭蓋骨は処理されたはず。
その先で新道と合流した。旧道側には施錠されたゲートがある。振り返ると椿坂峠付近と大黒山の姿があった。写真をと思って新道を少し峠側に戻ったが、いい姿は見つからない。傘をさしていても暑いので、適当な所で引き返した。
横を流れる余呉川が小川程度である。水を浴びたかったが、適当な下り場所がなかった。
川が道から離れていくと椿坂集落への分岐がある。国道から右へと分かれ、集楽の中を歩く。他の北国街道の村中の道と同様、脇に水路があり、真ん中には融雪用のスプリンクラーがある。
左手に椿神社跡の石碑を見ると、その先が椿坂のバス停である。バス停の向かいは八幡神社がある。石段を上がり、神社の森で涼みながらバス待ちをすることにした。境内にはシカの足の骨がヒヅメ付きで落ちていた。
住民よりも動物の方が多い地域だろう。思い出すと、住民に出会ったのは2人にすぎない。田畑の大部分は草まみれだった。水路設備のある土地も田植えされないまま放置されていた。生活に必要な野菜程度を作っているようだ。
上の写真はアナグマである。「グハッ」と逃げ出したところだ。下の写真は涼を与えてくれた椿坂八幡神社の大きな杉である。
2022/07/02