川北英隆のブログ

現実味のない顧客目線指示

KDDI(au)の通信障害が86時間ぶり(3日半ぶり)に解決したとか。わが家も一部auながら、通話なんてあまりしない。古い人間だから固定電話もある。だから今回の障害に無関心だったが、3日少しの通信障害はまさに「沈黙の夏」、大変だろうなとは思う。
これで思うことが2つある。
1つは、当然ながら、複数の手段の確保である。
知り合いの老人から電話があった。6月になって老人ホームに入り、とりあえずの電話は携帯なのだが(いずれ固定電話も元の自宅から切り替えるつもりらしいが)、それがauだとか。繋がらないのでホーム内に設置してある公衆電話から電話したとのことだった。
いざという場合を考えると、とくに病気などの心配があるのなら、通信手段は複数確保するにかぎる。その方法としてeSIMに注目が集まるとか。
僕の場合、海外旅行用に、多分eSIMに近いのだろうが、いつでも必要の都度契約できる手段を確保してある。「そうか、それを万が一の場合に使う手もあるな」と思った。それを使うと固定電話を含めて3つの通信手段を確保できたことになる。
正確に書くと、今回はインターネットに影響がなかったから、それも含めると4つか。通信相手の状況もあるから、全てが機能するとはかぎらない。とはいえ、大震災、火山爆発などの大災害や戦争が起きないかぎり、どれかは機能するはずだ。
もう1つは、政府の危機感のなさである。
総務省の大臣が「もっと顧客目線で対応せい」と言ったとか。それは正しい。でも、加えて言うべきこと、政府としても対応すべきことがあるのではないか。
先の老人の例で言えば、公衆電話の重要性である。その公衆電話は次々と撤去されている。中山間地域ではめったに見かけなくなった。かつてどこにでもあった公衆電話、非常に便利だった。それが今はどうなったのか。
大臣がKDDIに対して「もっと顧客目線で」と言うのなら、僕としては政府に対して「もっと国民目線で」と言いたくなる。非常時を想定し、政府としても対応すべきである。その一環として、公衆電話をいざという場合の通信手段として位置づけ、補助金を出して残すべきである。
思うに今の政府は理想論、結果論に走りがちである。実態を十分に観察し、それに基づいて発想することを忘れているのではないか。
事件が起きた時に「顧客目線で」というのは容易い。そんなことは誰にでもできる。必要なのは、事件が起きる前に何が顧客目線、国民目線なのかを指示することである。それができる政府なら、多少増税されたとしても目をつむろう。

2022/07/05


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