最近強く思っているのが通貨の分散投資の必要性である。言い換えると、自分自身の金融資産をいくつかの通貨に振り分けることである。
金融リテラシーなる横文字が流行りとなった。言い換えれば、「金融や投資に関する知識を持ちましょう」ということになる。金融教育ではおこがましいと誰かが言っていたが、でも金融リテラシーを授業に取り込むとなると、早い話しが金融教育である。漢字4文字をカタカナ混じりに直しただけ、オブラートに包んだだけではないのか。
それはともかく、その金融リテラシーの1つの中心的な知恵が分散投資である。「多くの卵を1つのカゴに盛るな」とも表現される。それはそのとおり、少なくとも2つや3つに分けておかないといけない。
「でもね」と思うのは、その分散投資の説明において、預金、債券、株式などの資産がすべて「円建て」であることが多い。説明を書いた本人として、円にこだわったわけではないのかも知れないものの、分散というからには、ドルやユーロ建てもあって当然、あたりまえだろう。そのことを説明文書などで明示しないのは、結局のところ円への集中投資に導いてしまい、分散投資の趣旨に反している。
しかも、これは以前のブログでも書いたはずだが、円建て資産を日本人は思っている以上に多く保有している。その理由は(外国籍の企業ではたらいていないかぎり)将来の賃金や所得である。金融資産がゼロに近い若年層にとって、この将来の賃金や所得は、現時点で保有する金融資産と比べて無限大に大きい。
僕がもしも若いのなら(ありえないかな)、すべての貯蓄をドル、ユーロ、豪ドル、カナダドルなどに変え、それを金融資産としておくだろう。そうしたところで、先々の給与が円で入ってくるので、生活には困らない。
老人も同じことである。海外旅行はもちろん、輸入食品が多ければ(たとえば高級ワインや食肉や乳製品など)、資産をユーロやドルで持っておく意味がある。
日本の金融教育は、多分テキストを書いている本人の経験が浅いこともあり、通貨の分散にまで気が回らなかったに違いない。でも、預金という現金同等の金融資産の多い一般的な日本人にとって、通貨の分散が最重要である。
ついでに、どうすれば通貨分散になるのか。外貨預金もあろうが、欧米諸国や国際機関のドル建て債がある。豪ドル建て債でもかまわない。要するに債券の発行機関と通貨の信頼性が高ければいい。発行機関の信頼性は、欧米の先進国か、先進国が作った国際機関が一番である。
債券の元金や利金の信頼性の高い通貨は、アメリカ、ユーロ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダだと思っている(漏れているかもしれないが)。政治や経済の変な国の通貨には手を出さないほうがいい。当面の金利は高いが、それ以上のリスクがあるのに決まっている(今までの実績もそうだった)。
2022/08/10