川北英隆のブログ

預金は元本を保証せず

日本人に特有な感覚として、預金は完全に安心、いつでも元本を返してもらえるし、多少なりとも利息が付くというのがある。本当なのか。先日、知人と話していて、「預金の元本は保証されない」と口走ってしまった。
もちろん、日本の銀行が潰れることはほぼゼロに近い。潰れたとしても預金保険があるから、少額の元本なら、100円は100円として返ってくる。
でもここで問わないといけない。「1年前には100円でバナナが2本買えたが、今の100円で2本買えるのか」と。同じことだが、「コロナの前、20万円でハワイに旅行できたが、コロナの喪が明けようとしている今、20万円で行けるのか」。
もっと端的に言えば、「コロナの前、100円あればほぼ1ドル札に交換できたが、今はどうか」。今日(9/1)ドルがまたまた上がり、139円台である。
「140円台に突っ込めば歯止めがなくなる」と言うチャーチストがいる。チャーチストとは教会の人ではなく、相場の流れを読む巫女みたいな人達である。霊能者ではないが。
また、日銀のトップが円安を防衛しないと述べている。これが「円を売ってドルを買う」流れの、つまり円安の追い風になっているとも言われている。
100万円の預金を考えてみよう。
1ドルが100円の時、100万円は1万ドルに相当した。もう少し現実的な想定をしておくと、1ドル=105円の時には、100万円=9523ドルだった。それが、1ドル=140円になろうとしている今、100万円=7142ドルに目減りしている。
ドルで考えれば25%の目減りである。100万円預金したところ、その元本のうち、25%も返ってこなかったことに等しい。
良し悪しは別にして、経済がグローバル化し、そのグローバルな経済活動を支えているお金はドルである。そのドルから見て円預金がいとも簡単に目減りしてしまう。つまり円預金の元本は保証されない、言い換えると、円預金の満期金で買えるバナナや小麦の量が減りかねないのである。
まやかしを述べるつもりはない。もちろんドル預金をしたところで、元本は目減りしうる。正解がないだけに、今までの豊かな生活を維持したいのなら、個々人が自分のこととして真剣に考えるべき事柄である。

2022/09/01


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