川北英隆のブログ

ドルの評価値が過去最高に

ドルの名目実効為替レートが過去最高値になったそうだ。つまりドルというが通貨が過去最強に達した。当然だろうと思う。しかし、今からドルを買うかどうかは別問題である。
名目実効為替レートとは、多数の貿易相手国について、それぞれの国と自国との為替レート(日本の例では円ドルレート)を、それぞれの国と自国との貿易金額でウエイト付けして(つまり加重平均して)求めた値である。その名目実効為替レートで、ドルが過去で一番高くなった(ドル高になった)というわけだ。
考えれば、ドルが一番魅力的なのは確かである。経済の比較でいえば、日本の停滞とアメリカの躍動とを比較すれば一目瞭然、「アメリカのほうがええやん」となる。
ヨーロッパ(ユーロ圏)は権威主義過ぎた。歴史ある貴族の思考でもって、環境改革(二酸化炭素の排出改革)を起こそうとしたが、視野が狭すぎた。
自分自身を利するために導入した天然ガス優遇に自分で蹴躓いた。それだけのみならず、自分達の派遣を強めようとして発展途上国の石炭火力発電を害悪扱いしたため、発展途上国に毛嫌いされ、ロシア制裁を無視されている。日本とすれば高効率の(二酸化炭素の排出を相当抑制できる)石炭火力発電を推進すべきだったが、途中でヨーロッパと妥協してしまった。
いずれにしてもエネルギーの弱点と権威主義的な傲慢を世界に見せてしまったユーロ圏は、通貨としてのユーロの魅力も低下させてしまった。ユーロといえば、その隣国のイギリスと通貨のポンドも、ある意味で同類項である。
資源国であるオーストラリア(ニュージーランドを含む)やカナダは魅力的である。しかし経済力ではアメリカに圧倒されている。アメリカ自身が資源国としての顔を持っているためでもある。
他の魅力的な国として、スイスやシンガポール、北欧があるものの、経済力の点で小さすぎる。一方、中国の元は、政治リスク(制度と経済面での世界的な地位の不安定性)が大きすぎる。
以上から、ドルが、ある意味で消去法的なのだが、好まれたと考えていい。
しかし、1ドル145円近くになった現在、円をドルに変えるのかと問われれば、考えてしまう。多少なりともドルのポジションを持っているのなら(ドル預金、ドル債、アメリカ株を持っているのなら)、少し様子見かなとも思う。
長期的に見て、ドルを今買っても損はしないと思うものの、為替レートが少しでも円高方向にゆり戻せば癪である。この主観的な理由だけなのだが。

2022/09/08


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