少し席を外していたうちに、円ドルレートが4円程度円高に(146円近くから141円台へ)振れていた。日本政府が「ドル売り・円買い」を実施したためである。「やっぱりね」「でもこの後、どうするのやろ」というのが正直な感想である。
政府として円安を放置していたのなら、「何をしてるんや」と国民からの非難の声が巻き起こるに決まっている。前から言っているように、円安は企業を利することはあるとしても、国民や国としては悪でしかない。
そこまで政府が考えたのかどうかはともかく、円安が続けば物価が上がり、国民の生活が圧迫される。それを防ぐためにも、他に即効的な対応策がない日本政府として、ドル売りは必然だったと思う。
しかし今後の問題が生じた。
1つは、エコノミストが盛んに言うように、アメリカとの関係である。今のアメリカは物価の上昇を抑えるのに必死である。そのためにはドル高が望ましい。主要な貿易相手国である日本の通貨、円が対ドルで上昇するということは、ドルが対円で安くなることだから、アメリカの物価上昇に働く。だから今のアメリカにとって望ましくない。
もう1つは、日本が世界的に強いドルを売り、それを世界的に弱い円に変えることが長期的に望ましいのかどうかである。自国の通貨が暴落した場合、その国は通貨防衛のために外貨準備として保有しているドルを売る。それと同じことが日本という国で始まったのかもしれない。
日本の外貨準備は、過去の国際収支の黒字が積み重なり、今のところ潤沢である。しかし、ドル売りは時間を稼ぐ手段でしかない。ドル売りの弾(外貨準備)の底が見えないうちに、日本経済そのものを立て直さないといけない。
繰り返しておく。今に円安を説明するのに、日米の金利差を持ち出すのは、経済の表面を語るだけである。そうではなく、日本のグローバルな競争力の低下が根底にある。日本企業の競争力をいかに取り戻すのかが本質的な議論であり、対応の始まりである。それが成功すれば、自然と円高に戻る。
この認識がないままの日本政府のドル売りだとすれば、極端に言えば「絶望」である。最近の例で言えば、日本のスリランカ化もありうると考えておかないといけない。異常献金、なんちゃらのツボでさえ糺せない日本政府だから、余計に心配になる。
2022/09/22