日本の輸出入の状況を調べてみようと思った。日本政府がドル売り介入を余儀なくされた急速な円安の根底に、日本の産業構造の劣化があると思ったからである。
日本の電気産業は輝いているのだろうか。こんな質問をされたらどう答えるだろうか。
周りを見渡せばいい。スマホやパソコンに日本製や日本メーカーのブランドがどれだけあるのか。テレビも(たまにしか買わないし、買っても普通の製品は安い)国内メーカーの撤退が相次いでいる。昔のステレオなんて今はないに等しい。
かつて輸出に占める「(貿易統計上の)電気機器」の割合は最高で26.5%に達した。資料に基づいて1980年から計算したところ、1983年から2007年まで輸出の20%を超えていた。日本の花形産業だったわけだ。それが今は17%台にまで落ち込んでいる。しかもその多くは部品である。完成品がどの程度あるのか、調べるのは大変なので推測だが、もっと凋落が目立つだろう。
一方、同じ「電気機器」の輸入割合が増えている。現在、輸入の16%以上を占めるようになった。スマホやインテルなどの半導体がその典型だろう。
今は日本の貿易収支(ここでは輸出?輸入)が赤字、つまり輸入超過になっている。この輸入超過の要因は、原油や天然ガス、鉄鉱石などの資源価格の上昇だとされるが、上で示した電気機器の数値を見ると、「本当にそれだけかいな」と疑いたくなる。
そこで電気機器の輸出入額を調べてみた。もっとも、通常は電気機器だと思われる電算機類が一般機械に分類されているので、それも調べた。結果を示しておく。
2021年・電気機器合計:輸出15.3兆円、輸入13.6兆円、輸出超過1.7兆円
2022年・電気機器合計:輸出17.3兆円、輸入17.1兆円、輸出超過0.2兆円
2021年・電気機器+電算機類:輸出16.6兆円、輸入16.0兆円、輸出超過0.6兆円
2022年・電気機器+電算機類:輸出18.7兆円、輸入19.8兆円、輸出超過マイナス1.1兆円
(2022年については1-8月の前年比伸び率を用いて推計した。)
以上の輸出超過額については2004年まで簡単に遡れる。その当時は年間8兆円程度の輸出超過だった。その輸出超過額が年々縮小し、今年はついに輸入超過に陥りそうな勢いである。日本の電気関係の企業が一斉に工場を海外に移転したためではない。もちろんそういう企業もあるのだが、最大の要因は完成品から日本企業のブランドが消えてきたことにある。
なお、輸出超過額について2004年以前を簡単に計算できないのは、それまで電気機器類の輸入を気にしなくてよかったことと、原油を気にしていれば十分だったからだろう。
まとめると、日本の電気産業の輝きは失われつつある。これが最初の質問への答えである。貿易収支の赤字は資源価格の上昇だけが要因ではなく、日本の製造業の弱体化も大きく影響している。
2022/10/16