しばらく宿題のまま残っていた金糞岳を歩いた。どこにあるのかというと、伊吹山の北北西、直線距離で15キロ。伊吹山地の一角として位置づけられ、標高1317mある。伊吹山の1377mに及ばないものの、それに次ぎ、伊吹のように砕石で痛めつけられていない。
金糞という不遇の名は、近くに製鉄関連施設があったことによるらしい。金糞山の北西側には金居原が、さらにその奥に土倉鉱山跡がある。『新日本山岳誌』によると、金糞岳の南の谷には古い鉱山跡もあり、1824年の『古図会』には金糞岳の名が登場するとか。
この金糞岳は京都から遠い上に、歩く距離も長い。そこでどうアプローチし、どのコースを選択しようかと思案しつつ、長い年月(といっても数年)が経過した。
今回、「天気も抜群のようだし」と決行した。どう行くのか。
公共交通機関でアプローチするのは、歩行時間を考えると難しい。とくに一般的なコースである南側の登山口へのバスはJRの駅から不便であり、乗り換えが発生しそうである。
そこで今回はタクシーを利用することにした。最寄り駅はJR北陸本線の長浜か虎姫である。行きは近くのタクシー会社に予約を入れておいた。帰りは下山してから電話をかけた。
金糞岳へ登るルートは複数ある。車があれば(そして林道が通行止めでなければ)簡単なのだが、運転をしない者に対しては、南側の高山キャンプ場から登るルートと、北西の金居原から登るルートとがある。
迷っていたところ、今年7月に金居原から土蔵岳に登ってしまい、金居原をあえて訪れる理由が1つ消えた。そこで金居原ルートよりも一般的だと思える高山キャンプ場からのルートを選んだ。
虎姫駅で予約していたタクシーに乗り、高山キャンプ場で降りた。実は高山キャンプ場から登ると、金糞岳を時計回りか反時計回りか、周遊できる。今回は多少のアップダウンのある南西尾根を登りに使い、比較的平坦そうな南尾根を下りに使った。下山後、タクシーを呼んだ後、一番近くの高山の村まで歩いた。
道はというと、南西尾根は比較的よく踏まれていたものの、標高900mくらいまでは溝状に削れた箇所が多く、歩きにくい。このためバイパスが横にでき、少し不明瞭な箇所が多かった。標高900m以降は明瞭な尾根道が多くなる。ただし灌木や笹が被さる箇所もあるので、夏は大変、かつヘビが怖そうだった。
山頂から南尾根を下ると、林道からの取り付きまでは道が整備されていた。しかし林道からの登山口の1つである連状台以降はかなり荒れ、道は溝状になり、テープもほとんどない。そもそも連状台から下る登山道の入口がきわめて不明瞭だった。
しかしそんな山歩きも、ブナを中心とする林と、その紅葉の始まり、さらには白山、乗鞍、御岳、中央アルプス、伊吹、鈴鹿、琵琶湖の大展望が十二分に償ってくれた。また歩きたい山の1つである。
タイムは、キャンプ場の登山口を7時40分に出て、戻ったのが14時35分だった。タクシー代金は虎姫から登山口まで5990円だった。
上の写真は南西尾根の途中のピーク、奥山から見た金糞岳(中央右)と白倉岳(中央左)である。下は白倉岳から見た白山(小さい写真だと遠くにうっすら程度)である。
2022/10/21