最近流行したらしいFIREって知っているだろうか。FIREとは、Financial Independence,とRetire Earlyの頭文字をからなる造語である。要するに、一生涯生活するのに十分な投資収益を確保して早期退職することらしい。結論は、普通人にとって白昼夢だろう。
と言いながら、僕は仕事をなくても十分に暮らせることを夢見てきた。根が怠け者で、だらだらと生活するのが大好きだから。しかし現実は厳しい。僕にとって厳しいと、早い段階で判明した。
というのも、物価上昇や生活水準の向上まで視野に入れて考えると、よほどの大儲けをしないかぎり不可能である。そのことを悟らないといけない。悟れないとすれば、FIREなんて夢見る資格すらない。
あるFIREの資料によると、FIREを実現するには最低限、年間生活費の25倍の資産が必要と書いてある。月25万円の生活費の場合は7500万円との計算が示されている。「意外に簡単じゃん」と思えるかもしれないが、本当に7500万円で大丈夫なのか。
そのFIREの資料では物価上昇は想定している。一方、生活水準の向上は想定していないようだ。しかも住居をどうするのかは横に置いてある。つまり少なくとも、持ち家があり、かつ7500万円が必要となる。するとハードルが上がる。
これに対して「親の家で十分」と思うかもしれない。しかしこれもハードルが高い。親と同居することになるから、その介護や生活費が問題になりそうだ(介護放棄は想定しない)。しかも家が古くなると、その修繕費がかかる。建て替えが必要になるかもしれない。雨漏りする家での生活ができるのなら別だろうが、それがほんとうの意味でのFIREだろうか。
生活水準の向上も深刻な問題になろう。この数十年年を思い出しても、パソコンやスマホが必需品となった。通信費もバカにならなくなった。また、FIREしていると旅行がしたいと思うだろうが、その費用をどうするのか。とくに海外に行こうとすれば、足元は劇的な円安である。7500万円ぽっちでは不安だらけだろう。
さらに大きなというか、以上に加えてというか、FIREには大きな問題がある。FIREは好調な株式市場を大前提としている。先のFIREの資料では、アメリカの場合は株式投資が年間7%の投資収益をもたらすと想定しているそうだ。アメリカのインフレ率を3%とすると実質的に年間4%の投資収益になり、FIREが可能との計算だとか。
株式が年間7%の投資収益率との想定が正しいとしても、コンスタントに7%なんてありえない。株価が大きく下がり、配当が減ることも十分にある。その時、どう生活するのか。ぎりぎりのFIREでは、安くなった株式を売却し、当面の生活費に充てなければならない。「株価の下落は絶好の投資チャンスかもしれないのに、逆に売りを強いられるなんて」というところだろう。
少し見方を変えると、FIREとは生活費という借金を抱えた株式投資になりかねない。借金をして株式投資をするなんて愚策、失敗の始まりだと思っている。
つまり本当の意味でのFIREには、宝くじ超の幸運を当てるか、必死に頑張って大きな財産を築くしかない。後者なら今流行するFIREではなく、これまでにもあった生活スタイルである。
ということで今のFIREの夢は、普通人にとっては白昼夢だとの結論になる。残念。
2022/11/07