川北英隆のブログ

資産所得倍増プランに一言

昨日、オンラインで会議があった(日曜日にかいな)。政府として政策の柱にしている「資産所得倍増プラン」が説明された後、それを支えるための「金融リテラシー(金融に関する適切な知識や判断力)」と「金融経済教育」に関して意見交換した。
「資産所得倍増プラン」のポイントは、家計に眠る銀行預金を主に株式や投資信託に向けさせ、企業の成長を促して企業価値の向上に用い、株価を上げ、家計が金融資産から得る所得を拡大させようとすることにある。すなわち企業と家計が共に利益を得る状態にさせようというわけだ。
少し思い出すと、表現は異なるものの、同じことが半世紀以上前から叫ばれてきた(僕は古いホモサピエンスやな)。「銀行から証券会社へ」、「貯蓄から投資(証券投資)へ」である。それにもかかわらす゜半世紀以上もの間、日本の世の中はほとんど何も変わらなかった。むしろ逆方向に動いた感が強い。
株式は危ないものとの印象が強い。証券会社は株屋と呼ばれてきた。何故そうなったのかを思い起こし、まずは証券会社が反省しなければならない。
JR西や雪かきをしない店と同じで、証券関係の業者は、顧客というか投資家の立場から考えず、自分の立場や都合から考えてきた。同時に証券マン/ウーマンや銀行員自身が投資に関して素人ではないかと思えてしまうほどである。まずは彼/彼女らの意識改革が必要である。
例を挙げておこう。その昔、証券アナリストだった頃、「ニッセイさん、株を買うだけでなく、もっと売り買いしないと」と証券会社から注意されたことがある。「長期投資やし、ほっといてくれや」と内心思った。その少し後、「外国株をもっと上場してほしい」と提案したところ、うにゃうにゃ言われてそれっきりだった。
証券関係の業者が顧客目線から逸れていることに金融庁も何とか気づいてきたようだ。仕組債(何かわからない場合はネットで調べてや)に関する証券会社や銀行の販売姿勢をとりあげ、金融庁が声を大にしてクレームを付けた。ようやく投資家にいい風が吹いてきた。
もう1点は日本企業である。詳しくは昨年7月22日のブログを見てほしいが、日本企業には株価純資産倍率(PBR)1倍割れが多すぎる。PBRだけで「経営の質の評価が決まり」ではないものの、PBR1倍割れという経営がよろしくない上場企業が多すぎる。投資家として、そんな企業の株式に投資したのなら浮かばれそうにない。
政府が株式市場に資金を呼び込みたければ、経営の質の悪い企業への投資を防ぐ工夫をしなければならない。もしも質の悪い企業へ無差別に資金流入を許したのなら、投資家は痛手を受け、「やっぱり株式は怖いやん、危ないやん」となり、これから先の半世紀も「やっぱり銀行預金が一番や」となりかねない。
要するに家計の金融リテラシーと同時に、企業の経営リテラシーが求められる。証券関係業者にも、素人投資家から脱却してほしいと思うのは当然である。

2023/01/30


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