4/26、国立社会保障・人口問題研究所が新しい「日本の将来推計人口」を公表した。5年に1度、推計し直す人口の長期予測である。そのプレスリリース文によると、「総人口は 50 年後に現在の7割に減少し、65 歳以上人口はおよそ4割を占める」とある。
その予測結果によると、日本の人口は2020年(最新の国勢調査時)に1.26億人だったが、70年には0.87億人に減少する。また高齢化率(65歳以上の人口の割合)は、28.6%から38.7%に上昇する。つまり3人に1人以上が老人になる。一方、子供(14歳まで)の割合は、11.9%から9.2%に減少する。いずれも出生率を中位(「ありうる」と考えられる数値の範囲の真ん中)に想定した予測である。
人口の予測の精度は高い。このため政府の政策の基盤となる。とはいえ、予測のために置く数値(想定値)に左右されることも確かである。
第1に出生率である。15年の国勢調査に基づく予想は出生率が中位想定値よりも低下した。今回はその出生率(大雑把に書くと、1人の女性が生涯に生む子供の数)を1.36(70年)としている。足元(21年)の1.30から回復に向かうするが、どうなのか。
第2に死亡率であり、その裏返しである平均寿命である。死亡率が急に大きく変化することは想定しにくい。依然として死亡率が低位にあるから、70年には男性が85.89歳、女性が91.94歳になる。5年程度先ならともかく、50年先の予測値は、「今の傾向が続けば」程度の参考値だろう。
第3に、これが今回大きな問題なのだが、国際的な人口移動に関する想定である。というのも、外国人の入国超過数(要するに日本いる外国人の増加人数)が年間16.4万人だとしている。この数と22年の出生数80.0万人(日本在住の外国人を含む)を比べると、入国してくる外国人の数が相当大きい。
出生率が横ばいだとしても、人口減少にともない、出生数は減少する。その一方で外国人が想定どおりに日本に入ってくればどうなるのか。70年には日本の人口のうち外国人の割合が10.8%、10人に1人が外国人(子供を含む)になるらしい。ちなみに今は2%少しである。
先の子供の比率、9.2%と比べればいい。将来は、子供よりも外国人が多いことになる。
「安い日本」の「安い賃金」を考えると、想定どおりに外国人が日本に来るとはかぎらない。とはいえ、外国人の比率が上昇しているのも確かであるし、「安い賃金」でも日本に来ようという変な外国人が増えることも十分にありうる。
政府がしっかりと頭に入れるべきことは、国の研究機関が外国人の増加を想定している事実であり、外国人の比率が10人に1人になるとの予測である。
外国人の増加が単純に「良い」か「悪いか」の問題ではない。さまざまな政策に関連する。
労働、住居、福祉、教育、権利・義務、治安などの問題を総合的に考え、対策を講じなければならない。これまで政府は「移民政策」を正面から議論することはなく、実質的になし崩しに移民を受け入れてきた。その結果、外国人が2%、50人に1人にまで上昇した。この現実は、もはや「なし崩し」が許されない状態を意味している。
移民問題にどう対処するのか。日本人の人口減少問題は、日本人以外の人口をどう扱うのかの問題と表裏一体である。政府が今までと同様、移民問題に「頬かむり」では、気づけば日本が日本でなくなっているだろう。
2023/04/30