最近、1990年頃からの30年強の間、日本経済が何を考えてきたのかを、当時の指揮者であり識者だった人達にヒアリングしている。そこで分かってきたことが3つある。
1つは、90年以降の日本のバブル崩壊について、当時は何も知見がなかったことである。
敗戦後の高度成長という世界的に稀な成長体験に酔いしれていたため、80年代がバブルであり、その崩壊がいずれ始まるとは予想の範囲外だったのだろう。
僕自身、80年代の後半、個人的には株価の位置が危ういとは思ったものの、それがバブルであり、その崩壊がほぼ必然だったとは思わなかった。というか、バブルもしくはそれに類似する用語さえ、当時はなかった。
2つに、日本の金融システムが揺らぐとは誰も考えなかったことである。政府の統制下にある金融というか銀行が不健全になるとは、想定外だった。
だから、金融システムの健全性、逆にいえば不健康度合いを測定する算数的な手法は皆無に近かった。バブル崩壊により、不良債権の額がどの程度にまで膨れ上がるのかは、直接の当事者である銀行自身でさえ測定できなかった。
想定外の、テールリスク(極端なリスク)とでもいうべき状況として何が考えられ、そのリスクにいかに対応するのか。今でも難問なのだが、そもそもテールリスクに関する頭の体操程度はしておくべきだった。
3つに、将来ビジョンを描く必要性である。
現実化したリスクに対処するには、リスクをある程度処理できたとして、その後にどのような世界を作ろうとするのか、そのイメージが明確でないと、リスクへの対処が行き当たりばったり、つまりパッチワークになる。この点は今の日本に一番欠けているというか、ほとんど誰も想定していないことではないのか。日本という経済社会の最大の抜けであり、課題である。
まだまだ(もう1ヶ月ほど)識者へのヒアリングが続く。新しく発見したことがあれば追加で伝えたい。
2023/05/18