最近、識者と雑談していると、トヨタに話題が時々及ぶ。僕自身も、新聞を読んでいて気になるのがトヨタである。何故かと言えば、その不調である。別に大幅な減益になったわけではない。むしろ決算はそれなりに好調である。確か配当も増えている。
誰もが気にしているのは電気自動車(EV)市場において大きく遅れをとった事実である。テスラのみならず中国に先を走られてしまった。相手はすでにEVの量産体制に入っている。EVの重要な部品であるリチウム電池では中国や韓国に完敗しているに近い。当初、パナソニックが先行していたものの、どんどん地位を後退させている。
トヨタの近未来の戦略が定まらない。全方位的な方針を公表し、EVはその中の1つでしかない。一方の日本以外の世界はEVに絞り込んでいる。というかガソリン車やハイブリッド車ではトヨタに勝てる見込みがないものだから、二酸化炭素削減を口実に、国家戦略としてEV化を推進している。その戦略にトヨタは対応できなかったのではないか。
トヨタの株価が投資家の失望を如実に表現しているようだ。というのもトヨタの株価は純資産割れである。ある依頼原稿を書き、トヨタの株価を調べたところ、PBR(株価純資産倍率=時価総額/純資産)が0.93倍だったのには驚いた。個別企業の株価に大きな関心がなかったもので、原稿を書くまで知らなかった。
この事実からすると、投資家の声は「トヨタはん、事業を解散して資産を株主に分配したらどうや」である。
日本経済は今やトヨタの一本足打法に近い。そのトヨタの近未来が危うい。潰れるわけではないが、衰退のリスクを投資家が予期している。とすれば、日本の近未来も危うい。
政府は国家戦略としてEV化を推進すべきなのだが、そこまで知恵が回らないのか。それともトヨタをはじめとする日本の自動車メーカーに難題を課したくないという過保護政策の結果なのか。困ったことである。今さらEV化を叫んでも遅いかもしれないが。
2023/05/28