仕組債がまたまた問題になり、某千葉にある大手地銀が勧告を受けた。金融庁も本気らしい。「でもね」と思うのは、「もっと早ければもっと良かった」と。
仕組債とは、その名のとおり、落とし穴を「仕組んだ債券」である。落とし穴に落ちなければ大儲けなのだが、そんな上出来は世の中にない。30年以上、仕組債が生き延びてきたのは、落とし穴が十二分に機能してきたからである。
仕組債の売り言葉は、「儲かりまっせ」である。仕組まれた債券の利回りが表面上高い。表面上というのは、落とし穴にはまると大損するからである。
証券会社は仕組債を利益の源泉としてきた。某証券会社に対して「仕組債を売るのは良くない」と忠告したが、「大損しない程度のものだ」と説明された。
金融庁もこれまで仕組債を黙認してきた。どういう風の吹き回しかは知らないものの、今年の初め頃から、金融庁のスタンスが急に厳しくなった。業者寄りから中立にポジションを移したのか。
僕は30年くらい前から仕組債の落とし穴にはまった事例を知っている。また外資系の友人から、その仕組みで会社は大儲けしている、投資家は大損していると裏付けを取った。
専門的に言うと、落とし穴とは投資家が「オプションを売らされている」ことにある。オプションとは選択権である。選択権を買った者は、自分にとって好都合な時に、その選択権を行使して利益を得る。都合が悪ければ(つまり損をするのであれば)行使しない。
この選択権の売買価格は理論的に求めることが可能であり、その理論価格で選択権を売買するのであれば大きな問題は生じない。残念ながら、証券会社が個人などの素人(彼らにとっては、ど素人)相手に選択権を売買する価格は、実は素人に非常に不利にできている。仕組債がその典型であり、素人は安い価格で、しかも知らないうちに選択権を売らされている。もう少し言えば、理論価格で売買されるのなら、仕組債の利率はもっと高くていい。
その選択権を買った証券会社は理論値に近い価格で転売し、大儲けしてきた。今でも仕組債を大きく宣伝している証券会社は誠実性に欠けると考えていい。金融庁の姿勢変更によって、証券会社の姿勢も多分変わっただろうが。
いずれにしても、証券投資にうまい話はない。「儲かりまっせ」には必ず裏がある。証券投資にかぎらず、世の中すべてがそうなのだが。
2023/06/09