川北英隆のブログ

株式大衆化に必須な一手-1

今年1月18日のブログで、「株式を1株単位で売買したい」と書いた。その後、ちらほらながら、この「1株売買」応援団ができつつある。
僕は日経新聞からの依頼記事で「1株売買」を書いた。その後、日経新聞の記者が書いた記事に「1株売買」が登場したことがある。確か7月13日の日経新聞大機小機に「1株売買」が登場した。
1月18日のポイントを繰り返しておく。アメリカ市場のように1万円とか2万円で株式を売買できるようになれば、誰もが気軽に株式投資できる。
買った後に株価が1割くらい下落するのは、日常的とは言わないまでも、珍しくない。大損になるだろうか。1万円の投資であれば1000円の損失にすぎない。「まあ仕方ないか」「居酒屋で飲んだとすれば、もう数回飲める程度の損失やな」で済ませられる。
しかし、今の日本の市場は100株単位でしか売買できない。単元株制度と呼ばれている。要するに、1株単位で売買できないように柵(バリア)を設けている。だから20万円とか30万円の資金が当然のように必要となる。
ちなみに、有名なキーエンスは680万円、ユニクロのファーストリテイリングは340万円、オリエンタルランドは55万円程度資金がないと投資できない。1割下がれば、オリエンタルランドでさえ高級料亭で夫婦が散財できるくらいの損失になる。庶民の立場からすると、この現実を目の当たりにしたのなら、気軽に日本株に投資できない。
言い換えれば、個人の零細な資金はお断り、柵の中の美田、つまり株式市場に入るには、まず現ナマを見せろと言わんばかりである。まるで害獣扱い、シカやイノシシと同じである。もっとも脂の乗った、つまり金持ちの個人は大歓迎、柵の中で歓待して、「美味い、美味い」なのかとも思う(誰が舌なめずりするのかな)。
零細な個人投資家を害獣扱いしてきた主犯は、実は上場企業である。
かつて1株株主運動というものがあった。水俣病を生じさせたチッソが有名である。1970年代、1株でも株式を所有していれば株主総会に出席でき、そこで抗議できた。だから、水俣病などの抗議活動の一環として流行った。
この運動を防ぐため、1981年に商法の規定が変えられ、単位株制度が導入された。それが今の単元株制度に引き継がれている。ある意味、総会屋対策に近かった。この「シャンシャン株主総会」を目論んだ企業と、それを助けた法律が今も存続している。
現在、「企業と株主の対話」を金融庁が打ち出し、「株主総会での議決権行使」が重視されている。このような時代に、1株株主運動を封じるためのバリアを見直さなくていいのか。見直さないのは「画竜点睛を欠く」の典型ではないだろうか。続く。

2023/07/20


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