川北英隆のブログ

どうして東京がいいんだろ

ロイターのネットニュースを読んで、子供の頃の歌を思い出した。「僕の恋人、東京へいっちっち」である。「どうして東京がそんなにいいんだろ」と、東京に恋人を奪われた守屋浩が泣いた。略奪婚かいな。
ロイターは、HSBC(香港上海銀行を発祥とする世界最大級の銀行)がロンドンにある本社ビルを移転し、床面積を縮小すると報じている。ロイターの記事は次にある。
HSBCのロンドン本社は、移転によって床面積を半分程度(10.2万から5.2万平方メートル)にするらしい。ただし移転先は銀行業にふさわしく、ロンドン中心部のシティーである。今、HSBCは「世界全体でオフィス面積を40%前後減らす目標」を掲げているとも。
イギリスはもちろん、アメリカでもオフィスを縮小する動きが盛んである。コロナにより在宅勤務が定着したことがある。また環境問題も影響しているという。自動車通勤によって生じる二酸化炭素の問題だろう。
日本はどうか。在宅勤務定着の動きはあるが、アメリカやイギリスにはほど遠い。痛勤はあるが、通勤による二酸化炭素排出の問題も少ない。だから首都圏への集中が続いている。
考えてみれば、東京に集中することに何のメリットがあるのか。
「僕の恋人、東京へいっちっち」は1959年の歌らしい。東京への集中が始まっていた。だから東京への転勤も多かった。僕も1977年に東京への出稼ぎを命じられた。
東京が魅力的だったのは、1つは経済規模にある。地方都市よりも大阪、大阪よりも東京だった。もう1つは利権である。東京に政治と行政機能が集まっていたから、企業にとって甘い汁が滴り落ちていた。極端に書けば、「お代官様」と「越後屋」の風景が展開していた。そこまで極端でないにしても、企業とすれば、東京の役所に日々通うことによって情報面で優位に立てたし、「ういやつ」と思われる機会も多くなった。
今はどうなのか。経済規模の面では、もはや東京ではない。大企業として全世界に事業展開しなければならない。東京にこだわっていたのではガラパゴス化する。一方の利権は時代にそぐわない。お縄である。
大企業がそれでも東京にこだわるのは、「甲斐性なし」もあるのだろうが(東京に行けない当時の守屋浩かな)、企業の幹部層が東京近辺に自宅を持っていることもあるだろう。利権というよりもエゴである。それに、経営層ともなれば社有車で送り迎えされるから、痛勤から開放されている。ついでに書けば、多くの場合、家族から疎まれているから、職住近接の地方都市に住むわけにいかない。
東京にこだわるのが時代遅れなのは京都企業を見ればわかる。大阪のキーエンスもそうである。彼らに言わせると、守屋浩とは真逆の意味で「どうして東京がそんなにいいんだろ」となり、「情けないな」である。「しゃあないんで東京に出張所程度は設けるか」となる。
東京を偏愛する金融業界のことも書こうと思ったが、これは次の機会に。

2023/07/02


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