今日の日経新聞の「チャートは語る」は狂っていた。年金世帯にもっと消費しろと薦めている。もちろん、そのための前提条件を指摘してはいるが、そもそも「老人と消費」というテーマが大外れだった。
多分、最近の老人は消費を控えているのではないか。この点は「チャートは語る」が指摘するように、今の日本の公的年金制度のインフレ率の反映が100%でないことによる。「マクロ経済スライド」という何のこっちゃ分からない、役人的用語の制度による。要するに年金の実質的額が、インフレ率を加味した場合に切り下がる制度である。
だから今年の公的年金額の通知を見て、「ええ、生活できるかな」とつぶやいた世帯が多いはずである。ウチのカミさんもその1人かな。
元の会社の同期入社の飲み会で「さくら水産」がよく使われると聞くのも、同じ理由かもしれない。これに関してある同期に、「それなりの会社に勤めていたのやさかい、もう少しましな飲み屋を使うたらと、カミさんが言うてた」と伝えたところ、「(ごめんねだが)魚が臭うような店やからな」と、同意したようなしないような返答があった。
老人の消費が盛んでない大きな理由は、そもそも飲み食いの量が減ってしまうことにある。若い頃のように飲み食いできないから。胃袋、肝臓の問題もあるが、足腰の問題も加わる。千鳥足になる前に転けてしまい、怪我や骨折をする。某友人は血だらけになって自宅に戻ったそうだ。
車やスマホに代表される耐久消費財も無理である。旅行も大した所にはいけなくなる。
今日の「チャートは語る」は老人に投資をしろとも書いている。これが本音かもしれない。最近、株価に追い風となるような記事が目立つから、その一環だろうか。
しかし、今まで銀行預金しか経験しなかった老人が、何の適切なアドバイスもなしに、新聞記事や証券会社(銀行もかな)の勧誘だけで株式や類似商品に投資するのは大いに危険である。近頃話題になり、販売が縮小した仕組債が最たるものだ。何故これまで金融庁が何も言わなかった(そう思える)のも不思議なことだが。
労働力もそうだが、老人に期待する社会は情けない。老人が最新の技術を習得して満足に働けるのか。答えはノーに決まっている。そもそも働く意欲もない。
老人が消費に向かないのは上で書いたとおりである。老人が株式投資に向かないことに関して、そもそも王道である長期投資に、ひょっとして生きる時間が足りないことを追記しておこう。それとも「チャートは語る」は、老人がワラ程度にはなるとでも言いたいのだろうか。
2023/08/13