川北英隆のブログ

JPX山道氏の記事を読んで

今朝の日経朝刊に日本取引所(JPX)山道CEOへのインタビュー記事があった。JPXは東証の親分である。嫌がられるかもしれないが、何回も会ったことがあるので、一言だけ感想を述べておく。要するに、事務方の記事案への修正も(多分)あり、無難にまとまっている。
全体として、東証に商品(株式)を卸している上場企業への慎重な配慮がなされている。また最大の株式投資家である公的年金への直接的な言及はなく、「年金基金など」との表現で、言及したのかしなかったのかが曖昧になっている。
最大の株式投資家の1つへとのし上がり、「いつ株式を手放すのか」という意味で、市場の潜在的な脅威となっている日銀への言及もない。日銀に関しては記者が質問しなかったのかもしれないが。
本来の顧客である個人投資家に関しては、NISA(少額投資非課税制度)参加への期待は語られているものの、では具体的に東証として個人投資家のために質の高いサービスをいかに簡便に提供するのか、取引所自身の「たゆまぬ改善」には言及がない。あったのかもしれないが、印象に残っていない。
たとえば、東証として質の高いサービスを簡便に提供するには、記者も質問しているように、東証第一部から少しだけ変身したプライム市場での上場企業を厳選して、たとえば200社に減らす案がある。この案に対しては、メリットに乏しいとし、むしろ機関投資家が企業を選ぶべきだ(選んでいるはずだ)としている。また現在の100株単位ではなく1株単位で売買できるようにする案に対しては、企業の負担増を指摘しつつ、「1株単位での売買がすぐに実現とはいかない」と答えている。
反対に、取引所よりも身分が低いと思える(「たかが業者」の)機関投資家へは、意訳すれば、企業と対話して企業経営の質を高めろと注文している。この点に関して、企業側から機関投資家へはアプローチできないとしているが、この議論は少し変である。質の高い企業は機関投資家を選びつつ、対話している(アドバイスを積極的に得ようとしている)のが現実である。この状況を事務方が知らなかったのかもしれない。
また山道氏の出身母体である証券会社への言及もなかった。銀行をはじめ、投資家への仲介業者の努力も必要ではないのか。この点も日銀と同様、記者の質問になかった可能性がある。
以上、山道氏はJPXのCEOとして適任なのだろう。今後のJPXの行動に関して、何か計画があるのかもしれないものの、日経に対して言質を与えなかったのだから。

2023/09/10


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