戦後、株式市場が再開したのは1949年5月である。戦前の財閥がアメリカの命令によって解体され、その保有株式が個人をはじめとする一般投資家に売却された。株式市場が再開された当時、個人投資家が70%近くの株式を保有したのである。それがどう変化したのか。
主要な投資家別に保有比率の推移を図にしておいた。これによると次のことが判明する。
1990年頃までは、個人の保有比率が急速に低下する一方、事業法人や金融機関(銀行、保険会社など)の保有比率が上昇していった。旧財閥グループをコアとした株式持ち合いなど(政策的な株式保有)が拡大したのである。要するに、グループを形成する企業が互いに他の企業の株式を少しずつ持つ形態である。財閥の頂点に立つ持株会社がグループの株式を持つという戦前の形態を変形させたのである。
政策的な株式保有は、当初は、国内の他の企業に株式を買い占められるのを防ぐ狙いで始まった。その後、外国の企業に買収されることからの防衛の意図が加わった。その後は、株主総会を平穏に済ませることが主目的となっていった。
まとめておくと、政策的な株式保有の中心に金融機関があった。それにグループを形成する事業法人が加わったのである。
この政策保有は1990年代のバブル崩壊によって揺らいだ。保有している株式の時価が大きく低下し、評価損が発生するようになったから。
この評価損の可能性は、金融機関の健全性に対する懸念をも生じさせた。このことは、金融機関が株式を保有することへの規制導入につながった。さらに2015年のコーポレートガバナンス・コードには、「政策保有の縮減」が原則として書き込まれた。これらによって金融機関の保有比率は低下を続けている。現在、銀行は2%、生保が3%、損保が1%程度の株式を保有している。これらを足し合わせると6%程度になる。図では信託勘定(年金、投資信託、日銀保有を除く)を十分に除けなかったため、金融機関の保有比率が10%を超えている。
事業法人も保有比率を低下させているが、金融機関ほどではない。もっとも事業法人には自己株式の保有が含まれている。2023年3月末において、3.9%が自己株式とされ、これを控除すると、事業法人の保有比率も徐々に低下しており、足元は16%程度の保有になる。
では、現在の主要な投資家が誰か。最大は海外投資家であり、日本の株式の30%程度を保有している。図にはないが、年金、投資信託も10%程度ずつを保有し、市場に与える影響が大きい。また日銀も7%程度を保有しており、先進国の中で日本の株式市場の特異性を際立たせている。
2023/09/23