お金の過不足から日本経済を眺めてみよう。国債の発行額が国内総生産(GDP)のおおよそ倍に達しているとか、個人の貯蓄が2000兆円を超したとか、それらを年ごとに眺めようとの発想である。
図がそれである。1980年度から2022年度まで、比較的簡単にデータが得られるので、それを用いた。規模感を明確にするため、名目GDPの比率に直してある。
この図で何を表そうとしているのか。民間非金融法人(大雑把には企業)、一般政府(国と地方自治体)、家計(おおよそ個人)、海外(日本から見た日本の外)について、毎年度、どれだけお金が、つまり資金が不足したのか、その大きさの推移である。
この図で一番強調したいことは2つある。
1つは、1990年代に入り、企業が資金不足から資金余剰になったことである。端的に言えば、銀行から借金する必要がなくなり、また株式や社債を発行する必要もなくなった。むしろ借金を返済し、さらには「無駄に現預金を貯めている」と揶揄されるようになった。要するに、事業で稼いだ利益の範囲内でしか設備投資をしなくなった。
もちろん個別に企業を観察すると、設備投資をするため、外部から資金調達しているところもある。しかし、日本の企業全体としては、毎年度、お金を余らせている。本当のところは、その余ったお金をどうするのだろうかと思えてくる。
もう1つは、毎年度、政府のお金が不足するようになった。図では1990年前後、つまり日本のバブルの頃のみ、政府は資金不足から免れている。しかしバブル崩壊以降、政府が大規模な景気浮揚政策を打ち出したため、自分自身の資金不足の規模が非常に大きくなってしまった。
この資金不足を補うため、政府は主に国債の発行規模を膨らませている。足元では2020年の新型コロナのパンデミック対策として大規模に予算を膨らませたから、その資金不足の規模は名目GDPの9.7%に達した。
海外は、日本から見る限り資金が不足している。これは、日本から海外に資金が流出していることを意味する。国際収支上の経常収支が黒字である(日本への流入が多い)ことでもある。
個人はというと、依然としてお金が余り、それを貯蓄している。足元では、新型コロナのパンデミックの時、政府がお金を配ったことに象徴されるように、貯蓄が通常よりも大きく増えたことがわかる。
企業がこれ以上お金を貯めてどうするのか、政府がこれ以上借金をしてどうするのか、いろんな日本の問題が見えてくる図でもある。
2023/09/29