ここのところ株式投資が盛り上がっている。背景にあるのはNISAである。少し下がれば理由を付けて株式が買われる。また株式に関するセミナーや座談会に呼ばれたりする。そこで、個人にとっての株式投資とは何かを少しだけ考えてみた。
セミナーや座談会でよく使うセリフは、「60年以上、株式と付き合ってきた」ことである。60年以上というのは、「今の日本にはどこにもおらんやろ」との自負でもある。「えらい年寄りやな」と思われるだけかもしれないのだか。いずれにせよ60年以上にわたり、大損したことを含め、いろんな体験をしてきた。
さてNISAは個人投資家向けの制度である。だからこそ、NISAという器に入れる株式や株式投資商品は個人投資家のことを考えたものであるべきなのは当然である。しかし、誰が本当にそんなことを考えているのか。そんな思いが沸々と湧き上がる。
以前に書いたかもしれないが、某日本生命でアナリストをしていた頃、準大手証券会社の真摯な営業マンが僕をつかまえ(理由や状況は忘れた)、「日本生命はもっと売買をしないと・・(儲からない)」と呟いた。その営業マンの日頃の言動からして、自社の株式売買手数料収入を増やそうという意図でないことは明白だったが、それでも変だった。
「株式は売買して儲けるもの、安値で買って高値で売れば儲けられる」というのが、業界の信念というか、確信だったのだろう。でも、相場師と称される売買の天才であっても、儲け続けて人生を全うしたとの話はほとんど聞かない。
株式でちゃんとした利益を得るには、利益の獲得を続けるには、これと思える企業の株式を長期に保有することが王道である。売買して稼ごうというのは、いずれどこかで捕まる。市場の波なのか警察なのかは知らないが。
NISAの時代を迎え、そんな売買せず、これと思った企業の株式を持ち続けている投資商品がどれほどあるのか。個人が長期保有こそ王道と思っているのか。個人が証券会社からちゃんとした説明を受けているのか。株式売買手数料を無料化しようとの動きは、「もっと簡単に、安価に売買できまっせ」との間違ったシグナルではないのか。
断片的になるかもしれないが、少し続けて「株式市場の真実」を書いておきたい。
2023/11/01