川北英隆のブログ

一休の森さん

日経新聞を見ていると、ふと引きつけられる箇所があった。死亡欄である。そこに「森正文氏(一休創業者)11月22日、肺がんのため死去、61歳」とあった。「そうか」と思った。
一休は旅館やレストランの予約サイトである。1998年創業、2005年に上場している。当時の日本ではまだ、ネットを使った予約は珍しかったと思う。先見性があったわけだ。
2015年、その一休をヤフーに売り渡した。東洋経済のサイトによると、2015年8月、森氏は経営から完全に退くことを決意したという。それに飛びついたのがヤフーである。約1000億円で一休の株式を公開買い付け(TOB)したとある。一休はヤフーの完全子会社となり、上場廃止となった。
森氏は41%保有していた一休の株式を売り渡し、引退した。2016年だから7年前、54歳と計算できる。
何故、この森氏のことを書くのかというと、彼は元々日本生命に勤務していたそうだ。僕がそのことを知ったのは大学に転職してからである。元部下が同期入社(もしくはその前後)、かつ当初の配属部署も一緒らしくて、一休の上場時に、「会社を立ち上げる時に出資の相談をしてくれなかった、冷たい」とぼやいていたから。
まったく面識がなかったが、一度だけ、確か少人数のセミナーで同席したことがある。僕は森氏のことを知っていたが、森氏が僕のことを知っていたかどうかは不明である。セミナーが終わり、知人と興じていたから、一言も話さずじまいだった。
その後のある時、元社会人学生から、私募ファンドを組成したい、ついては大金持ちの森氏を紹介してもらえないかとの相談があった。森氏と親しい元部下を知っていたので、彼を通じて私募ファンドへの投資を打診してみたが、あっさり断られた。当然だろう。
一休の創業と売却、そこに森氏の先見性を感じる。早世したのも、これからの世界が大混乱する、大変だとの先見性からでないことを祈っておきたい。

2023/11/26


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