川北英隆のブログ

証券会社も白袴

電力会社、ガス会社のPBRが1倍を割っていることを先に書いた。政府として電力やガス料金を安く設定させるのなら、上場させるのは変、個人への詐欺的行使かもしれない。実のところ、業界の主要企業のPBRが1倍を割っているのは電力業界、ガス業界だけではない。
証券業界を指摘しておこう。証券業界のPBRは電力業界やガス業界ほど悲惨ではなく、1倍を上回っている企業も散見できる。とはいえ、野村、大和、SBIといった大所が1倍に達していないのも事実である。日本の株式市場が、1980年代後半のバブル崩壊以降の最高値近辺にあるのに、またNISA制度が拡充されることから証券会社がそれに向かって燃えているのに、何か変である。
理由は簡単、証券業界が過当競争にある。SBI証券と楽天証券が株式売買手数料をゼロ円に設定したことに、この過当競争が象徴されている。しかも株式売買手数料以外の収益源に乏しい。
SBI証券や楽天証券は競争に生き残り、天下を取り、その後で大儲けしようとしているのだが、この2社が巻き起こした過当競争に引きずり込まれた他社、とくに中小証券は大変である。どうするのか。
金融庁や東証とすれば、証券会社の1社や2社が撤退したところで大した事件ではないのだろう。だから株式売買手数料ゼロ円を認めた。業界として、見くびられたものである。
とはいえ、東証として「PBR1倍割れを何とかしろ」と号令をかけた手前、お膝元というか子分とも言うべき証券会社のPBRの悲惨さが気にならないのか。子分といえども多くが廃業し、業界が発展しなければ、いずれは衰退が我が身に降り掛かってくるはず。次の一手を見てみたいものだ。
次の図表はQUICK社のデータに基づく証券会社のPBRの推移である。

20231211証券会社のPBR.png

2023/12/11


トップへ戻る