株式で売却益が出たとして、一方で損をしている(買った時よりも株価が下がっている)企業があった場合、その損失を瞬間的に実現することが賢いと前回書いた。正確に書くと、税金の出世払いになるので賢いのである。このことを模式的に示しておく。
アップした図表がそれである。売却益に対する税率を20%として計算した。
スタート時に100円で買ったA社の株式が1年後に120円になったので売った。20円の利益だから、税金は4円である。
一方、B社の株は、スタート時に100円で買ったのに、1年後に80円に値下がりしている。いずれ上がると予想しているので持ち続けるつもりだが、A社の売却益があるので一度売り、20円の損失を確定し、すぐ後に80円で買い戻した。
このA社の株式の売却と、B社の株式の売却・買戻しを合わせると、1年後の売却益はゼロとなり、税金を支払う必要がなくなる。
さらに1年後、B社の株式は予想していたとおりに値上がりし、140円になった。それに満足して売却し、売却益60円(140円‐80円)を得た。税金は12円と計算できる。
それでは、B社の株式について、1年後に一度売却せず、そのまま持ち続けていた場合はどうか。A社の株式の売却益に対する税金4円(20円の20%)と、B社の株式の売却益に対する税金8円(この場合は「140円‐100円」の20%)、合計12円を払うことになる。
つまり税金の合計は同じである。違いは、前者の場合、2年後にまとめて払うのに対し、後者の場合、1年後、2年後と毎年払うことである。
言い換えると、税金は後払いになる。それだけではない、隠れたもっと大きな差異がある。
それは、図表ではB社の株式が2年後に値上がりすることになっているが、現実はそれほど甘いものではない。もっと時間がかかるかもしれないし、値上がりの予想が外れることもある。このように考えると、「損出し」は税金の単純な後払いではなく、値上がりが実現したことに対する「出世払い」になっている。
株式投資とは、利益が得られる時もあれば、損する時もある。しかし、損したときにもチャンスが転がっている。税金の出世払いがその1つの例である。
2023/12/20