川北英隆のブログ

終身働くべき企業はあるか

終身雇用で思い出したのは、日本において終身働いて報われる企業が極めて少ないことである。報われるとの意味は、金銭的ではなく、精神的な満足感に近いだろう。もう少し言えば、社会に対して、小さくてもいいから何らかの貢献をしたとの納得感である。
金融も含めたサービス関係はどうだろうか。最近話題になった仕組債のことを思い出すと、素人相手に正確な説明をせず、販売側にとって都合のいい金融商品を売っていた。これでは精神的な満足感は到底得られない。これまでの投資信託の多くも、仕組債ほど酷くはないが、やはり販売側にとって都合のいい金融商品が多かった。
この点、製造業のほうが社会に対する貢献がしやすいのかなと思うものの、先日のダイハツ(2016年7月にトヨタの完全子会社)の不正に出くわすと、かつての有名企業も地に落ちたものだと感じる。軽自動車の国内需要が少なくなっているのが影響したのか。
12/19の取引を最後に上場廃止になった東芝も同じようなものである。「貧すれば鈍す」かな。
企業として長く繁栄を続ける事例は少ない。終戦直後、就職先として人気があったのは、砂糖、生糸などの繊維だったらしい。石炭も人気だったらしいが、これが一番早く消えていった。次に生糸である。
綿糸は長らく生き残り、最初の東京オリンピックではニチボー貝塚(戦前の大日本紡績改めニチボー、今のユニチカの貝塚工場)のチームが「東洋の魔女」と称せられ、バレーボールで金メダルを獲得した。
そのユニチカ、今はどうなったのかと調べると、プライム市場に上場はしているが、時価総額は「トホホ」と100億円割れだ。実家のある郡山に、かつては赤レンガの大きな工場があった。小学校から工場見学にも行ったし、社宅もあって同級生もいたのだが。ほんまに「トホホ」だ。
株式市場は企業の栄枯盛衰を如実に表す。思い出すと、石炭企業が消え、生糸はすぐに細々、砂糖も相場師のおもちゃになり、造船は影が薄くなり、海運は企業数が少なくなり、繊維で生き残っている企業はというと、繊維というよりも化学や機械部品に衣替えしていった。
1980年代の末、確か(確認していない)業種別時価総額で最大を誇った銀行も、その後は株価が低迷し、再編が進んだ。「昔の名前のまま」の銀行も少なくなった。
要するに、「驕れる者久しからず」というか、栄華は長く続くない。就職の時、有名企業を選び、一生安泰と思うのはスカ籤を引いたに等しい。必要なのは実力であり、その後の勉強(学校での勉強とは異なる)である。
著名、有名企業に「物は試し」と就職するのは賛成である。でも、それで大成功、一生物だと思ってしまうと大きな落とし穴にはまる。要注意である

2023/12/23


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