パタゴニアの旅行ではチリとアルゼンチンの国境を陸路で3回出入りした。その体験からすると、アルゼンチンが年率100%を超える猛烈なインフレと経済破綻に直面している国とは到底思えなかった。
今回訪れたのはチリとの国境地域であり、かつアルゼンチンの南部である。しかも残念なことに、首都のブエノスアイレスは空港に下り立っただけである。だからアルゼンチン経済の全体像はわからないのが正直なところ。
かつアルゼンチン南端のフエゴ島はアルゼンチンの中で豊かとか。というのも観光で栄えているうえに、原油や天然ガスが産出し、イーロン・マスクが宇宙ビジネスの通信基地を設置するなど産業的にも発展している。しかも「アルゼンチンの辺境の地」という位置づけで、「住んでもらうだけでもありがたい」と税的にも優遇されているらしい(未確認)。
フエゴ島を含め、パタゴニアのアルゼンチン側はチリ側と何の違いもないに等しかった。違いがあるとすれば、道路が悪いかな程度だったと記憶している。物価は(ドルで支払ったピールの値段でだが)、アルゼンチンの方が安かったとの印象である。
アルゼンチンの猛烈なインフレとは、要するに自国通貨の崩壊でしかないのだろう。海外からの旅行者が、海外通貨(ドルもしくはユーロ)で支払う限り、無関係ということか。
猛烈なインフレの影が見えたのはスーパーマーケットでの買い物である。スーパーはドルを受け取らないため、観光客の僕はクレジットカードで支払うのだが、現地人はアルゼンチン通貨で支払う。そのとき、1000ペソ札の束を差し出す。レジがその枚数を数えるのに、結構無造作だった。
この1000ペソ、実は1ドルの値打ちしかない。観光客が普通の店で買物をしてペソで支払う場合、多くは1000ペソが1ドル換算だった。900ペソの店もあったが、1000の方が計算しやすい。物価がすぐに10%程度上がってしまい、同じ率で通貨の値打ちが下がるとすれば、900はたちまち1000になる。「それやったら1000でええ」ということか。計算しやすい1000の時期に旅行してラッキーだったかも。
母を訪ねて三千里の時代、豊かなアルゼンチンに働き口を見つけるため、貧しいイタリアからの移民が多かったとか。今でもアルゼンチンはスペイン系やイタリア系をはじめとする白人がたくさん住んでいて、他の南米と民族構成が異なる。そのアルゼンチン経済がいつしか没落し、対外債務の支払い不履行(デフォルト)を何回も繰り返すようになった。
今でも国土は豊かである。その豊かさが経済的な規律を失わせたのか。不思議な国だと思えた。経済をかじる者として、もう少し調べる必要がある。
1000ペソ札をアップしておく。ウィキには100ペソ札が一番高額紙幣だとあるが、記述が追いついていない。近々、2000ペソ札が発行されるとの情報もある。
2024/03/21