本当の株式投資とは何か、これを忘れた議論が多い。今日の大機小機「貯蓄から投資への突破口」(陰陽氏)もそれに近かった。
ここまで書いて、前にも陰陽氏のコラムに文句を付けたように思えてきた。確認はしないが。
コラム書いてあることは正論っぽいのだが、その内容は「投資信託の保有が株式投資だ」との大前提に立っているようだ。これに対し、本当の大本命は個別企業の株式に投資することだ。というのも、個別株を選び、業績をたまに追うことによって、経済や金融に対する知識が深まる。投資信託任せでは、知識に深みが出ない。
何回も書くように、個別株に投資する観点から、日本の株式市場の最大の問題点は100株単位でしか買えない単位株制度にある。つまり最低投資単位が大きすぎ、たとえば最近人気の東京エレクトロンは400万円ないと投資できない。
初めて株式を買おうという個人にとって、「何のこっちゃ」となる。貯蓄から投資へと最初の一歩をと思った瞬間、多分、その市場のナンジャモンジャ的な作法に戸惑うだろう。
ちなみにアメリカは1株からだ。みんなが名前を知っているアップル、マイクロソフト、グーグル(アルファベット)、アマゾンは2万円から5万円程度だったか、その金額さえあれば買える。高騰し、日米の株高を演出したエヌビディアは、今でさえ10万円少しである。ちなみに高騰する前は3万円程度だったこともあると記憶する。
では何故、日本の単位株制度を廃止し、1株から買えるようにしようとの声が大きくならないのか。
日経新聞では2022/8に「1株から日本株を買える制度に改めよ」との社説が打ち出された。しかし、それに賛同する証券会社や金融機関は少ない。ネット証券が単位未満株を売買できるようにしている程度か。
思うに、投資信託が証券会社や銀行の重要な収益源だからである。とくに日本株の投資信託が、傘下のアセットマネジメント会社を含め、グループの経営を支えている。しばらく前までドル箱だった仕組債の販売が半ば禁止になったわけだから、ここで日本株の投資信託が縮小すれば、非常な痛手となる。
上場企業もまた、個人投資家が多くなると株主総会の手続きなど、事務コストがかかってしまう。これに対しては、1株単位の売買になれば、10株を1株に併合する(市場での株価が今の10倍になる)という対策もあるのだが、だれもこの方法を語らない。
また、個人が日本企業のことを正しく評価できないとの考えもあるのかもしれない。しかし、そう考えたとすれば、国民をなめている。金融庁にも時々言っているのだが・・。
「何とかしたれや」と思う。誰も彼も本気で貯蓄から投資へとは考えていない。今回もまた、個人は一番後回しのような気がする。怒らないといけないだろう。
2024/03/28