果無(はてなし)と呼ばれる山域を歩いた。地形図には果無山脈との名前が記されている。どこにあるのか。奈良県の最南端、和歌山県との県境である。今では「熊野古道に位置する湯の峰温泉の北側」と説明したほうが簡単かもしれない。
果無の名を知ったのは中学生だったか、高校生だったかの頃である。地図を見ていて、その秘境的な名に惹かれてしまった。とはいえ時々その名を思い出す程度で、「どう行くのか」調べないまま、この歳になった。「難しいだろう」との先入観がバリアになっていたのかもしれない。
それが、ふとした機会に「行ける、行こう」となった。旅行会社から届いたパンフレットをパラパラ見ていると、「果無山脈縦走」との見出しが飛び込んできた。日程だけ確認し、すぐさま申し込んだ。
専用バスを利用した1泊2日のツアーである。どういうルートなのか。
大阪駅前に集合し、高速道路を和歌山県の有田まで利用する。有田からは国道424号線、425号線を使って日高川を遡り、秘境の温泉で少しは名の知れた龍神村に入る。その龍神村の途中で日高川の大きな支流、丹生ノ川(にゅうのかわ)に入り、県道を使って奈良県との県境近く、東平にあるヤマセミの里キャンプ場まで行く。バスの便も、本数は少ないながらあるようだ。
このヤマセミの里が果無山脈縦走の西側の登山口である。ここから果無山脈の西端にある和田森(1049m)へと登る。後は100m前後のアップダウンを繰り返しつつ、主峰の冷水山(1262m)のある稜線を東へと歩き、熊野古道小辺路の果無峠に出る。ここで果無山脈の縦走は終わり、後は小辺路を北東へと下り、果無の集落を経て十津川温泉まで下る。
十津川温泉からは国道168号線を使って十津川を遡り、天辻峠をトンネルでくぐって五条に出る。その後は高速道路で大阪に戻った。
今回歩いた果無は、かつて抱いたイメージとは異なり、普通の奥深い山だった(日本では当然か)。作業用の林道も稜線の下に付けられている。自然林が残されているとはいえ、植林も多い。
ただし交通の便は非常に悪い。果無の稜線を歩くだけなら1日あれば済むだろう。しかしアプローチを考えると、車を運転して主要なピークを往復するだけか、今回のように1泊2日になるかのどちらかになる。1泊2日といってもツアーに参加すれば比較的簡単だが、そうでなくてテント泊を利用し、公共交通機関でとなればどうなるのか・・。
果無への東西の登山口の写真をアップしておく。上は西側のヤマセミの里、下は東側の十津川温泉である。ともに桜がかなり咲いていた。
2024/04/01