川北英隆のブログ

トリガイ

トリガイを知っているだろうか。知っていれば食通として合格である。
トリガイってどんな貝なのかは知らなかった。京都に移住して、カミさんが錦でトリガイを買い、二枚貝であることを初めて知った。赤貝に似ているような。何の根拠もないが。
このトリガイ、子供の頃から知っていた。父親が春になると、「トリガイは売ってへんのか」と母親にいつも尋ねていたからだ。母親はあまり興味がないらしく、適当に答えていたように思う。
この父親が言っていたトリガイとは、海のない奈良だから、実はトリガイの干物である。子供ながらも1つ、2つ程度食べさせてもらった。干物だから硬い。しかし抜群に美味かった記憶がある。「ああっ、こんな食べ物があるのか」と思い、大事に仕舞ってあったトリガイをくすねて食べた思い出もある。
何故こんなことを書くのかというと、今日、カミさんがトリガイの刺し身を買ってきて夕食に出してくれたからである。清水の舞台から飛び降りたとか。
僕らにとってこの先、何回トリガイの春(トリガイは春が季節)がやってくるのか。だから、「何回でも飛び降りてええで」とは言ったものの、トリガイはますます高くなったようだ。値段は書かないが。
父親のトリガイに戻ると、当時の干物は、今日食べた生と同じ程度の大きさがあった。ということは、今の生の5割程度大きかったのか。その干物、小学生の高学年になると、ほとんど我が家で見なくなった。干物は今もあるのだろうか。あんな美味い食べ物だから、多分今も「ある」のだろうが。
寿司屋でトリガイを注文すると、値段はなんぼなのか。今の若年層や子供の多くは、トリガイなんて知らないまま終わるような。それはそれでトリガイ競争が激化しなくて嬉しいようであり、文化が伝わらなくて寂しいようでもある。
写真はというと、美味かったため、食べ終わってから気づいた。

2024/04/08


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