火曜日、某所で雑談していて、働くって何か、賃金って何かを考えさせられた。その発端は、「最近の従業員は何か言うとすぐに辞めてしまい、転職する」との話題だった。
辞めてしまう理由はいくつかあるだろう。職場との関係でありうるのは、仕事が面白くない、給与が安い、上司との人間関係が良くないだろうか。もう1つ、根本的な理由として、「しがみついてでも働いていかないと、満足のいく生活ができない」という、昔の状態に現在はない。
よくは調べていないが、日本の給与水準はこの30年くらい、ほとんど上がっていないと思う。上がっていたとしても誤差の範囲だろう。一方、上場企業の利益は30年間で倍増している。一言で表現するのなら、労働分配率が大きく低下している。マルクス的に表現すれば搾取だ。
つまり日本企業は人件費を抑制することで利益を稼いできた。しかも日本の賃金は横並び、年功序列的である。これでは若くて仕事のできる者にとって、大きな不満が生じる。
仕事(同様に勉強)との付き合い方には何種類かある。1つは仕事大好きタイプ、2つは仕事をするのは嫌いだが給与の範囲内で適当に対処するタイプ、3つはどうしても仕事になじめないタイプだろうか。
どのタイプが多いのかといえば、今も昔も2つめのタイプだと思う。生活水準との対比で給与が高ければ(典型的には貯蓄ができれば)、このタイプの者も適当に働き、上司の命令にも従い、働くだろう。しかし現在のように、生活水準が上がり、その割に給与が上がっていない状態においては、上司の命令に対して、「給与も出さんで何を言うてるのや」と、反発も湧き上がる。
この点、キーエンスは日本の中で特異な存在だと思う(東洋経済の記事にリンクしておく)。何が特異かといえば、「30代で家が建ち、40代で墓が建つ」給与である。従業員の平均年収は2000万円を超える。外部から見るとブラックもどきなのだが、従業員がしっかりと働き、企業自身も驚異的な利益を稼いでいて、今や日本を代表するまでになった。平均勤続年数12.2年と書いてある。すぐに辞めるのもいるだろうから、意外に勤続年数は長い。
振り返ると、僕が社会人になった当時の日本企業はキーエンス的タイプが多かったと思える。有名大学を卒業し、大企業のサラリーマンになるのが一般的な夢だったのは、給料が良く、定年まで勤務できると思えたからである。しかし中に入るとサラリーマン生活とは体育会系の延長、ブラック色に染められ、欧米の真似に必死だった。
今の日本はそんな夢から醒めている。というか目標がなくなった。多くの企業のトップはサラリーマン経営者であり、自分の地位に満足し、晩節を汚さことしか頭にない。
そんな企業に若者が入ったとしても、仕事が面白いわけがない。かといって今や給与が高いわけでもない。だからその企業で働いているのは入社してしまったからに過ぎず、何かあればすぐに「辞めるモード」に入る。
と、とりとめもなく、以上を考えた次第である。
2024/06/21