7-11の親会社であるセブン&アイホールディングス(以下、セブン)がカナダの同業(コンビニ大手)、アリマンタシォン・クシュタール(以下、カナダ社)から買収提案を受けた。何故なのか。
理由は、1つはセブンの株式時価総額にある。もう1つはセブンの経営問題だろう。
セブンの株式時価総額は8/5の株価急落時でも4兆円を超えていた。とはいえ客観的事実として、4兆円、5兆円は「大した金額じゃない」。金額面からは、買収されても不思議でない。円安により、海外から見た日本企業の株価の安さが目立つと、一般論として言える。
カナダ社はトロント証券取引所に上場している(取引所コードはATD)。調べると、時価総額は8兆円前後ある。つまりセブンよりも大きい。業態は違うが、小売のアマゾンは260兆円を超え、ウォールマートは87兆円である。日本でもファーストリテイリング(ユニクロ)は14兆円ある。セブンは、日本人からして意外に小さいとわかる。
海外のコンビニの多くがそうなのだが、カナダ社もガソリンスタンドと売店(コンビニ)を併営している。米国のコンビニ業界では7-11に次ぐ。今回の買収の真の狙いはアメリカでのコンビニ兼ガソリンスタンド店舗だとの説がある。
セブンの5兆円が世界基準からして大きくないとしても、カナダ社としては自分の半分以上の規模の企業を買うわけだから、さすがに大きい。だから買収したとしても、すぐに米国とそれ以外に解体し、米国以外を売却するのかもしれないが。
もう1つ、セブンが狙われた理由として経営の問題がある。
セブンの祖業はスーパーのイトーヨーカ堂である。そのスーパーは、日本が高齢化し、人口減少する中、斜陽産業になった。店に入ったとして、食品以外に何か買いたいだろうか。百貨店はとうの昔に斜陽化したが、高級品に活路を見出している。スーパーはどうするのか。
セブンの柱となったコンビニも国内では飽和状態にある。つまり国内では斜陽化の一歩手前と言える。それに加え、セブンではお家騒動があった。7-11の生みの親かつ育ての親だった鈴木敏文氏が2016年、実質的に解任され、創業家へのシンパが実権を握った。
それが原因かどうかは不明ながら、スーパー事業の改革が遅れている。アクティビストがセブンの株式を買い、それをテコにスーパー事業の改革を求めていた。今回の買収がセブンの本丸での火の手だとすると、アクティビストの騒ぎはボヤに過ぎなかったが。
加えて、7-11のピカピカ度が落ちたことである。鈴木氏の解任の後、店の規律が緩んだように感じる。7-11のごみ置き場からは、食品の汁が道路に流れ出ていた。「不快な店」になっていたわけだ。店員のテキパキ度も落ちている。またレジでの挨拶が珍しくなった。
普通の店なら、買収されても不思議ではないし、客として問題はない。カナダ社に買われたところで、サービスが大きく落ちることもないわけだから。
ということで、今回の買収提案はびっくりするものではない。日本企業への本格的買収提案の火の手の一報がセブンだったのには、とりあえず「へえー」とは思ったが。
2024/08/24