川北英隆のブログ

株価急落に思う

8/2に続き、緊急のブログである。今日、日経平均株価が4451円下がったから。下げ幅としては過去最高であるが、率にして12.4%はブラックマンデー時(87年10/20)の14.9%を下回る。しかも当時はストップ安が相次ぎ、14.9%以上に下げようにも下がらなかった。
上には上があり、ブラックマンデーの震源地であるアメリカでは、NYダウが22.6%も下げた。今回の日本の下げはその6割程度である。
とはいえ、日経平均株価の、この1年間の上げ幅が帳消しになったのも確かである。ちなみに昨年7月末は32192円だった。今日の終値、31458円よりも上にある。今年になってNISAを始めた個人にとってショックだろう。
株価とはこんなものである。鳴り物入りで相場に参加すれば危うい。他人とは違うことを考え、行動しないといけない。なんて書くと「損をしている」投資家に怒られそうなので、今日の下げの背景を指摘しておきたい。
1つは、8/2に書いたように、日銀の急ぎ過ぎがあった。
日銀は金融政策を正常に戻したいと思っている。その方向性は正しい。超が2つも3つも付くような過去の政策は行き過ぎだった。企業に採算や競争というものを忘れさせ、海の外の苛烈な競争から隔離されたような、天国の気分を味わわせた。
今日、窓の外にトンボが何匹も飛んでいたが、昨日の京都の夕立で、「もう秋や」「極楽や」と浮かれて飛び出したのだろう。そんなトンボと一緒である。日銀はトンボに、「ここは極楽やない」「外には仰山敵がおる」と言いたかったのだろう。だから政策金利の引き上げを急遽実施した。それはまた、財務省が言う「行き過ぎた円安」の歯止めともなり、一石二鳥である。そのはずだったのだが、過ぎたるは、というか急ぎ過ぎたるは及ばざるが如しである。
2つに、アメリカ経済に見られる変調の兆しである。
世界経済を牽引してきたアメリカが揺らげば、中国に期待できない現在、世界全体の経済が揺らぐ。日本もその例外でない。それどころか、経済の揺らぎは弱い国に集中しかねない。その集中の先が日本である。「経済は絶好調」どころではなくなる。円安の揺り戻しと、その影響が象徴となろう。
3つに、投資家の行動である。
短期売買で稼いできた投資家が、この4週間の大幅な下落で一気に振り落とされた。それどころか、借金して株式を買っていた(典型は信用取引していた)投資家が、下げによって追証に迫られ(資金の貸手から追加で借金の担保を入れろと迫られ)、それに対応できないものだから、買った株式を投げ売りする事態に追い込まれた。売りが売りを呼んだわけだ。
確約はできないが、ここまで下げれば経営の順調な企業の株式を買うチャンス到来だろう。むしろ今まで、株であれば猫も杓子も買われたのは異常そのものである。その異常さが消えようとしている。今回の急落によって株式市場が正常化したとも言える。

2024/08/05


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