インドはウシの国である。よく知られているように牛はヒンドゥー教の聖獣である。だから運搬、耕作、牛乳、燃料(牛糞)には使われるが、食料にはできない。死んだらどうするのかとは思うが、質問しなかった。一方、水牛はインドでは正式な牛ではないらしい。
そんなインドの牛だから、堂々と道を歩いている。車は文句を言わず、クラクションを鳴らすわけでもなく、徐行し、避けて通る。そんな神様としての牛がスピティ川まで見られた。その地域を過ぎるとヒンドゥー教の世界から遠くなる。と、道路から牛の姿が消える。
とはいえ、今回のツアーで牛肉は出てこなかった。国内で流通していないからだろう。豚も出てこなかった。こちらはイスラム教徒同様、ヒンドゥー教でも不浄な食べ物である。羊は出てきても良さそうだったが、これもなかった。
ついでに書くと、アルコールもヒンドゥー教では基本は禁止である。イスラムもヒンドゥーも、暑い地域の発祥だから、生活の知恵としてアルコールを忌避したのだろう。
戻ると、ヒンドゥー教は殺生を嫌う。このため菜食主義が多いとか。ただし旅行では鶏がよく出てきた。さすがに日本人にヒンドゥー教徒はいないと思われたのか、現地の旅行会社が気を利かしたのか。ヒンドゥー教も、四つ足ではない鶏への忌避感は和らぐようだ。
そもそも現在のヒンドゥー教徒のタンパク源は牛乳、チーズ、バターである。生活が豊かになるにつれ、卵も一般的になりつつあるようだ。これに昔からのタンパク源である豆が加わる。ダルカレーが代表的な食べ方だろう。
牛といえば、ヤクも加えないといけない。チベットほど多くは見かけなかったが、ザンスカールからラマユルへと峠を越えるときに見かけた。標高3000mから4000mの地域を旅行したわりには少なかったと思うが。なお、水牛もいた。ただし、きわめて限定的だった。
写真は上から順に、ヒンドゥー寺院の前の牛、同じ村で見かけた牛、放牧されているヤクである。真ん中の写真の牛だが、神聖ながら八百屋を営む村人は追い払っていた。陳列している野菜を食われかねないからだろう。
2024/08/13