川北英隆のブログ

配当取りはどこまで有効か

毎年、9月と3月は「配当稼ぎ」の月である。その月末の株主に対して3月末決算の日本企業が配当金を割り当てるから、その1日だけ株主であれば配当金が得られる。そこで、にわか株主になって配当金受け取りの権利を獲得し、翌日消えるとの投資戦略がなされる。
そもそも、そんな美味しい話しが半年に一回転がっているのか。正確には、企業数は少ないながら、毎月末ごとに配当金受け取りの権利を割り当てる企業が存在するから、1ヶ月に1回、小遣いを稼ぐチャンスが転がっている。そんな夢物語があるのか。詐欺でないのか。
まず、1日だけ株主になろうとする場合、ターゲット企業の株式を買い、売らなければならない。ここに手数料が必要となる。現在、ネット証券を使えば手数料は非常に安い。だから、ネット証券が発達した現在、この点を気にする必要はないに等しい。
とはいえ、「配当取り」のための売買は非常に有名で、少し株式投資した者なら誰もが知っている。そして企業が何円の配当をするのかの情報もほぼ知れ渡っている。とすれば、月末の少し前から買いが入るはずである。さらに「月末の少し前から誰かの買いが入る」と予想するのなら、「もう少し早く買っておくか」との投資家が出現する。この結果、月末には「配当取り」の買いがたくさん集まり、株価はその配当の分だけ相対的に上昇しているはずである。
しかも月末が過ぎ、月初に株主になったところで、次の配当金受け取りの権利が発生するのは半年先である。つまり1日の差で大きな損得が生じる。このため月末(株式の受け渡しのために必要な日数を考慮すれば売買した日を含めて3日営業日前)に、「配当権利落ち」が発生し、理論的には配当予想金額分だけ株価が下落する。
「でもね、そんな配当の権利落ちにともなう株価下落ってあるの」との反論があろう。僕としてはあまり注意深く観察していないものの、最近の9月末と3月末に、そんなに顕著な配当権利落ちに伴う株価下落が見られなかったと記憶している。それは、誰もが株価は上昇するものだと思っているから、配当金額相当分だけ株価が下落すれば、すぐさま「安くなった」と感じた投資家が買いをいれるからにすぎない。株価の上昇局面が終われば、つまり総強気が終われば、配当権利落ちに伴う株価下落が生じて当然である。
これに加えて注意すべきは業績の悪化である。配当利回り(配当金額/株価)が高い株式に惚れてはいけない。景気が悪化すれば、企業業績も悪化し、予想していた配当が支払われない可能性が高まる。予想が悪い方に外れれば株価は急落する。景気の上昇局面しか経験していない投資家にとって、今後は要注意だと書いておこう。

2024/09/10


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