川北英隆のブログ

学費も当然値上がりする

東京大学が学費の値上げを決めた。当然だろう。11万円上がって64万円少しになるとか。それでも安い。5/9や6/24に書いたように、学費を上げることは日本の教育の質を高め、世界に通用する人材を多く排出する、違う輩出するのに不可欠だ。
6/24に指摘したように、大学の教員の給与が安すぎる。これでは二流の人材しか日本の大学の研究者として残らない。海外に流れるか、安易に企業に就職するかである。
設備も良くない。高騰した電気の使用も控えなければならない。証券投資分野で語るのなら、実証分析に必要なデータを十分に購入できない。
企業とタイアップして研究開発をすれば何とかなるものの、そのための営業活動に貴重な時間が取られる。うまくタイアップできたとしても、研究開発が企業の意向にしばられやすくなり、自由な発想をなかなか活かせない。
さらに書けば、大学教員の仕事の相当部分が研究開発以外に割かれている。企業に対する営業活動と同様、政府関係機関から予算をもらうために作文しなければならない。それも大量に。研究論文用の作文はある意味で楽しい作業なのだが、予算のための作文は少しも楽しくない。
一言で表現すれば、日本の大学は「安かろう、悪かろう」になっている。大学生は大した勉強をしなくても卒業できる。だから「悪かろう」の現実を意識しないだろうか。しかし社会人になり、他の企業、とくに海外との競争に直面すれば、「悪かろう」の意味が明らかになる。
大学の学費をもっと値上げしていい。政府が物価と賃金の好循環を目指しているのなら、当然それは大学の教員や職員にも言える。つまり生産性の向上による賃上げが望ましいとするのなら、その論理は大学にも通じる。大学の質を上げることが「大学の生産性の向上」であるから、その向上分を大学の教員や職員の賃金に反映させることが正しい。
大学の学費が上がれば、その学費に見合わない、言い換えれば「高かろう、悪かろう」の大学や学部は淘汰されていく。大学の競争である。これも日本全体の人材の質を上げるために望ましい。
学費が上がれば、優秀なのに大学に進学できない者が出てくる。しかし、その者に対する国としての、もしくは大学としての資金援助を充実させればいいだけだ。逆に学費を安くして大学進学を容易にしようとすれば、大学の質の低下と学生の質の低下が同時に進んでしまう。
そもそも論を言えば、政府が物価と賃金の好循環を目指す初期の段階で、大学の学費問題も俎上に上げるべきだった。それを怠ったものだから、大学が「予算が苦しい、どうしたものか」と騒いでいる。学費問題において大学側に非があるとすれば、今回のにわか仕立て的な値上げ論議だろう。

2024/09/12


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