静岡市は広い。わりと有名なように、南アルプスの名峰、赤石岳も静岡市である。それはともあれ、静岡の市街地の地形はどうなっているのか。丘歩きで実感したように、静岡市の市街地が位置するのは単純な平地ではない。
賤機山から下りて住宅地を通り、直線距離で3キロほど南東にある谷津山に向かっていた時、渡った小さな川をふと見たところ、流れが北を向いていた。海は南だから、一瞬は「あれっ」である。
試しに国土地理院の地形図のページに入り、「色別標高図」を開いてみるのがいい。一目瞭然なように、賤機山から日本平(海側で静岡と清水を分けている山地)にかけて、標高が高い。静岡市街の南側(海側)が低いのは当然として、北側(南アルプスに続く山側)も低いとわかる。
別の言い方をすると、静岡の市街地は駿府城を中心にちょっとした高台の上にある。
市街地の北は低地になっていて、それが清水まで続いている。その低地には、ちびまる子ちゃんにしばしば登場する巴川が流れている。
「佐々木の爺さん」が愛する川であるだけに、小川ではない。静岡の名山、竜爪山を源流とする川であり、その川の河口に巴川製紙(今の巴川コーポレーション)の創業の地がある。製紙に使う水を供給したわけだから、小さな川でないことは確かだろう。
さらには、巴川が運んで土石が名勝、三保の松原を形成したようだ。また、巴川は日本平に流れを阻まれているため洪水を起こす。1974年7月に大洪水があったらしい。これを機に大谷川(おおやがわ)放水路が掘削され、巴川の流れの一部を太平洋側に直接流すようにしたという。
言えることは、今川家や徳川家が漫然と平地に居城を構えたわけでないことだ。治水のことを考え、安全な地を選んでいる。現在のように土木技術を過信し、低湿地に工場を建て、住宅地にするような愚は犯していない。
人口が多くなったことだけを理由に、「平らならどこに住んでもいい」というのでは、安全性を全く無視したことになる。少しは先人に学ぶべきだと思えてくる。
2024/10/23